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VOL.1106 朝食を食べる習慣は良好なART成績に寄与する

2024年09月08日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1106                2024/9/8
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:朝食を食べる習慣は良好なART成績に寄与する
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Sep. 2024__________________________________________

朝食を食べる習慣は良好なART成績に寄与する
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朝食を食べる習慣はART成績の向上に寄与することが東京医科大学を中心としたグループの研究で明らかになりました(1)。

これまで地中海食のような食事パターンが、良好なART成績に関連するという報告がなされています。

ところが、いずれも海外で実施された研究で、国内で実施された研究では食事パターンによるART成績への影響は認められませんでした。

その一方、東京医科大学や金沢大学、京都ノートルダム女子大学のグループは、朝食を抜いたり、不規則な食事パターンが体内時計や生殖機能にマイナスの影響を及ぼすことをいくつかの研究で報告しています。

そもそも、朝食を抜くことは、肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病、脳卒中、冠動脈性心疾患の発症リスクが高くなることは、広く知られています。

◎どんな研究だったのか?
2022年2月から2024年1月に東京医科大学でART治療を受けた117名の女性患者に食物摂取頻度調査票でART治療前の1年間と20歳時の朝食の摂取回数を調査し、また、年齢やBMI、喫煙、飲酒、分娩歴、AMHをカルテから入手しました。

それらのデータとその後のART治療成績との関連を解析しました。

◎どんな結果だったのか?
週に6、7回朝食を食べる女性は、食べない女性に比べて出産まで至る確率が高いことがわかりました。

朝食の摂取頻度以外にART成績に関連したのは年齢だけでした。

◎朝食を食べるということ
朝食を食べることが、食事全体の質だけでなく、生活の質にまで影響を及ぼすことが、多くの研究でわかっています。

まず、朝食を食べる人は食べない人に比べて食事全体の質がよく、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素や食物繊維の摂取量も多いという、東京大学の研究グループが厚労省の国民健康栄養調査のデータを解析した結果(2)を報告しています。

朝食を食べた人と朝食を食べなかった人の食事全体の質や栄養素の摂取状況を比較した結果、18歳から49歳の男女で朝食を食べない人の食事全体の質のスコアが527±6だったのに対して、食べる人では599±2と、朝食を食べる人は食べない人に比べて食事全体の質が有意に高いことがわかりました。

また、食品の摂取量では、朝食を食べる人は食べない人に比べて、野菜や果物、肉、卵、乳製品の摂取量が有意に多く、反対に、菓子類や清涼飲料水の摂取量が有意に少ないこともわかりました。

さらに、栄養素の摂取量では、朝食を食べる人は食べない人に比べて、ビタミンDやビタミンE、ビタミンB2、B6、葉酸、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅の摂取量が有意に多いこともわかりました。

このように朝食を食べるか食べないかは、単に食事の回数だけでなく、食事の質や栄養素の摂取量と強く関係することがわかりました。

次に、東京大学の研究は、妊娠中の女性を対象に、朝食の欠食が栄養素の摂取量だけでなく、メンタルの健康度への影響も調査しています(3)。

被験者の妊婦の21.0%が朝食を欠食しており、朝食を食べる妊婦に比べてオメガ3脂肪酸やカルシウム、鉄、葉酸の摂取量が有意に少ないことを明らかににしています。

そして、朝食欠食者に眠気感や不安定感、不快感を感じている者が有意に多かったというのです。

オメガ3脂肪酸や鉄、葉酸と言えば、妊娠や出産に際しては特に重要な栄養素です。それだけでなく、妊娠中の母親の精神状態は子どもの出生後の心身の健康に影響を及ぼすことも知られています。

◎朝食を食べる人は食事バランスがよい
当社による食習慣や睡眠習慣、体格について、妊活カップル284名へのアンケート調査でも、朝食の内容が食生活全体に影響を及ぼしているという結果を得ています。

朝食にたんぱく質源のおかずを食べているかどうか、大豆製品や魚類を食べる習慣があるかどうかが、他の食事バランスと密接に関連していました。

栄養学的に朝食は食べるべきか、食べないべきかという議論もあるようですが、これまでの研究結果を見ていると、単に食事の回数や栄養素の摂取という問題だけではないように思います。

朝に、朝食を美味しくいただき、気持ちのよい1日をスタートしたいという、スタイルというか、生き方も含めて考えるべきなのかもしれません。

朝食だけでなく、食事は生活に密接に関連していて、朝食がおろそかになってしまうのは、たいていは、時間的、気持ち的余裕のなさが挙げられています。

そのため、朝食を見直すことは、生活を見直すことであり、これまでの研究で明らかなように、朝食の質は、そのまま生活の質に直結しています。

朝食を大切にすることの波及効果は、私たちが想像している以上に大きいようです。


文献)
1)Nutrition 2024; 127: 112555
2)Nutrients 2018; 10: 1551
3)Maternal health 2009; 50: 148.

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

朝食を食べる習慣の影響は大きいようです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1106
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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