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VOL.1111 食事からのファイトケミカル摂取と細菌性膣症の関係

2024年10月13日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1111               2024/10/13
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:食事からのファイトケミカル摂取と細菌性膣症の関係
・お知らせ:不妊相談会
・編集後記


最新ニュース解説 Oct. 2024__________________________________________

 食事からのファイトケミカル摂取と細菌性膣症の関係
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食事からのファイトケミカルを多く摂取する女性ほど細菌性膣症にかかりにくいことがイランで実施された研究で明らかになりました(1)。

細菌性膣症は、腟内の細菌のバランスが崩れたとき、すなわち、乳酸菌(ラクトイバチルス)が少なくなり、悪玉菌が増えたときに起こる腟感染症で、妊娠や出産に不利になります。

食事からファイトケミカルを多く摂取することで細菌性膣症の予防になる得るかもしれないという、大変、興味か深い研究です。

ファイトケミカル(phytochemical)とは、ファイト(phyto)を意味する植物とケミカルを意味する化学が合わさった、「植物性化学成分」のことで、紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから自らを守るために作りだされた成分です。

ファイトケミカルにはポリフェノール、カロテノイド、含硫化物があり、これまで数千種類の成分が発見されています。主な働きとして、抗酸化作用や抗菌作用などが知られています。

◎どんな研究だったのか?
2020年11月から2021年6月まで、イマーム・ホセイン病院産婦人科で、細菌性膣症と診断された女性151名と細菌性膣症でない健常女性143名を対象に実施された研究です。

細菌性膣症の診断にはAmsei基準で4つの診断基準のうち3つ以上を満たした場合を細菌性膣症としました。

一方、食事からのファイトケミカルの摂取量は食物頻度調査票を用いて食事調査を実施し、McCartyの方法を用いてファイトケミカルインデックス(指数)を算出しました。ファイトケミカルインデックスというのは、食事から摂取しているファイトケミカルの種類や量の多さを示します。

その上で、細菌性膣症の女性とそうでない女性のファイトケミカルインデックスを比較し、それらの関係を調査しました。

◎どんな結果だったのか?
その結果、ファイトケミカルの種類や量をたくさん食事から摂取している女性は細菌性膣症のリスクが有意に低いことがわかりました。

また、脂肪摂取量が増えると細菌性膣症リスクが有意に上昇することもかわりました。

さらに、家族歴に細菌性膣症が見られる場合も、細菌性膣症リスクが有意に高くなることもわかりました。

これらのデータから、食事からのファイトケミカルを多く摂取する女性ほど細菌性膣症にかかりにくいことが明らかになりました。

◎ファイトケミカルの抗菌作用に注目したい
ファイトケミカルは、「植物に含まれる化学物質」ですので、当然、植物性の食品に含まれています。

主に、植物の苦み、渋み、辛みや色素などに関与する成分ですので、色が鮮やかだったり、独特の風味を持っていたりする野菜、果物、豆類、芋類、海藻、お茶やハーブなどです。

よく知られているものは、ポリフェノールやカロテノイド、含硫化合物があります。

ポリフェノールには、ブルーベリーやブドウなどに含まれるアントシアニン類、コーヒーに含まれるクロロゲン酸、大豆に含まれるイソフラボン類、セロリやパセリ、ピーマンに含まれるフラボン類、緑茶に含まれるカテキン類、果実類やカカオに含まれるフラバノール類、ブロッコリーやタマネギに含まれるフラボノール類、柑橘類の果皮に含まれるフラバノン類などがあります。

また、カロテノイドには、ニンジンやカボチャに含まれるαカロテン、ニンジンやカボチャ、トマトに含まれるβカロテン、ミカンやホウレンソウに含まれるβクリプトキサンチン、トマトに含まれるリコペン、ホウレンソウやブロッコリーに含まれるルテイン、カボチャやトウモロコシ、モモに含まれるゼアキサンチンなどがあります。

一方、含硫化合物は聞きなれないかもしれませんが、ダイコンやワサビに含まれるイソチオシアネート系、タマネギやキャベツに含まれるシステインスルホキシド系などがあります。

これらの成分には、抗酸化作用や抗炎症作用、抗菌作用、抗がん作用があり、必須栄養素ではないものの、生理活性成分として、私たちの健康の維持に寄与してくれています。

これまでポリフェノール類などの抗酸化作用がアンチエイジングに有用だという印象が強かったかもしれませんが、抗菌作用があることもよく知られていて、ポリフェノールは腸内の乳酸菌やビフィズス菌を増やすこともわかっています(2)。

また、クランベリーが女性の尿路感染症の予防にもなる可能性がコキウランレビューで示されています(3)。

そして、今回の研究でファイトケミカルを食事から多く摂取することが細菌性膣症の予防になる可能性が、世界で初めて明らかになりました。

細菌性膣症は膣内のラクトバチルスなどの善玉菌が減り、悪玉菌が増えることで起こりますので、ファイトケミカルの摂取が腸内の善玉菌を増やし、膣内細菌叢に届くことによるものと考えられます。

細菌性膣症は、着床不全や早産、流産のリスクを高めることから、妊活女性にとっては、膣内や子宮内のラクトバチルスを優勢にし、感染症にかかりにくくし、炎症を招かないように気をつけることがとても大切です。

そのためには、乳酸菌やラクトフェリンのサプリメントも重要ですが、食事からファイトケミカルを多く摂取して、生殖器内の細菌叢を良好に保つ体質にすることが最も重要です。

◎ファイトケミカルを多く摂取する食べ方

ポイントは野菜の食べ方です。

1)食べる野菜の種類を増やす
野菜によって、ファイトケミカルがどんな組み合わせで、どれくらい含まれているか、全く異なります。

数多くの種類の野菜を揃えることで、多彩な抗菌作用が備わることになります。

そのためには、毎日、同じ野菜を食べ続けるのではなく、できるだけ多くの種類を食べる必要があります。

2)色々な色の野菜を揃える
野菜の種類を増やす場合、同じような色ではなく、さまざまな色の野菜を組み合わせます。

ファイトケミカルは野菜の色の素で、色が異なると働きも異なります。そのため、さまざまな色を組み合わせることで、多彩な抗酸化作用が備わることになります。

野菜を選ぶ際には、赤、オレンジ、黄色、紫、緑など、異なる色を組み合わせることを意識します。

3)旬の野菜を中心にする
野菜の多くは品種改良され、一年中いろいろな野菜が買えるようになりましたが、野菜に含まれる栄養素の量は一年中同じではありません。

野菜の種類や栄養素による違いはありますが、見た目は変わらなくても、旬の時期に最も多く含まれます。

そのため、旬の野菜を中心にすることで摂取できる栄養素も変わってくるはずです。

4)生鮮野菜を選び、調理加工済み野菜は避ける
冷凍野菜と生鮮野菜に含まれる栄養素の量を比較すると冷凍野菜は生鮮野菜に比べて栄養素の量が70%から50%以下だったという研究報告がなされています。

冷凍の工程そのもの、また、冷凍の際の洗浄や切断により栄養素が損なわれるのかもしれません。

また、同様に惣菜の野菜も生鮮野菜に比べて含まれる栄養素が少ないという報告もなされています。

同じ量の野菜を食べても、調理加工済み野菜よりも生鮮野菜を食べるほうが抗酸化物質を有効に摂取できると言えます。

5)カットしたらすぐに食べる
野菜をカットすると酸化酵素が作用し、栄養素を酸化することが知られています。

ブロッコリーで酸化酵素の抗酸化作用への影響を調べる実験を行なったところ、1分後に76%、15分後には60%に減少したことを確かめた研究報告がなされています。

そのため、野菜を調理(カット)した後は、できるだけ早く食べ、レモン汁などで和えることが大切です。

そういう意味ではカット野菜として販売されている野菜も避けるのが無難かもしれません。

6)ゆで過ぎない、ゆで汁を再利用する
栄養素によっては加熱すると壊れる性質のものがあり、ゆでると減ってしまいます。

そのため、必要以上にゆでることは避けたいものです。

また、水溶性の栄養素はゆで汁に溶出するので、下ごしらえのために使ったゆで汁を汁物などに再利用するとよいかもしれません。

ただし、その場合でもゆで時間が長くなれば、ゆで汁中の栄養素も分解してしまいましので、ゆで過ぎは禁物です。

とにかく、野菜には自然の恵みとしか言えないほど、多種多様なファイトケミカルが存在します。

文献)
1)J Health Popul Nutr 2024; 43: 135
2)J. Funct Foods 2020; 66: 10382
3)Cochrane Database Syst Rev 2023; 11. No.: CD001321.

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お知らせ__________________________________________________________

東京都調布市のウイメンズクリニック神野主催の第32回不妊相談会が2024年11月9日の土曜日に開催されます。

院長の神野正雄先生は、情熱をもって不妊治療、特に、高度生殖医療に取り組まれ、高齢による卵巣機能低下が原因の不妊症に対して、独自の考え方と方法で、高い実績を挙げておられる先生です。

当サイトのドクターに訊くでも、「質のよい卵を育むための生活習慣~高齢不妊との正しい戦い方」というテーマでインタビューさせていただき、記事にしています。

神野先生は、現代における不妊の主な原因は、晩婚化によって、お子さん望むようになったときには、女性は、既に、妊娠しづらい年齢に差し掛かっていることが多くなったこと。

また、現代に特有の不健康な生活習慣、すなわち、夜更かし、ストレス、歩かない生活、質の悪い食生活などが、インスリン抵抗性を招き、卵子や精子の質を低下させていることを指摘されています。

さらに、抗糖化機能性食品「ヒシエキス」が、ART反復不成功の高齢不妊患者さんの妊娠率を改善することを臨床試験により見出され、国内や海外の学会で発表され、論文にもなっています。

これまでの不妊相談会では、なぜ不妊になるのか、カップルで取り組むべきことはどんなことなのか、高度不妊治療とはどんなものなのかを解説しています。

個別相談も可能だそうです。
※先着28名まで。

◎第32回不妊相談会
日程:2024年11月9日(土)
時間:13:00~15:00
場所:ウィメンズクリニック神野
定員:28名
費用:無料
参加希望の方は下記あてお電話でお申込みください。
042-480-3105
・詳細はこちら
https://www.akanbou.com/seminar/b675e3600bc13cbb69bbab0d4ad70ca069c7b0cd.pdf
・ウイメンズクリニック神野サイト
https://xs132599.xsrv.jp/index.html


編集後記____________________________________________________________

カラダのメンテナンス、大切です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1111
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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