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妊娠しやすいカラダづくり No.1116 2024/11/17
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:男性の飲料摂取量と精液検査結果や治療成績との関係
・編集後記
最新ニュース解説 Nov. 2024__________________________________________
男性の飲料摂取量と精液検査結果や治療成績との関係
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治療前のカップルの男性のカフェイン入りのコーヒーや紅茶、アルコール度数の高い酒類の過剰な摂取はパートナーのART治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性のあることがハーバード大学の研究で明らかになりました(1)。
この研究では男性の飲料の摂取量は精液検査結果とは関連しませんでした。
つまり、ART治療では男性の妊娠させる力は精液検査結果だけではわからないということになります。
そのため、精液検査で問題なかったからといって、決して、お役御免ではありません。
◎どんな研究だったのか?
これまで、男性の飲料、具体的にはカフェイン入り飲料、アルコール飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料の摂取量と精液検査結果の関係についてはいくつもの研究がなされていますが、相反する結果が報告されています。
その一方で、男性の妊孕能(妊娠させる力)の指標として、精液検査結果よりもART治療成績のほうが適していると考えられるため、ハーバード公衆衛生大学院の研究グループは、ART患者カップルの男性の飲料と精子パラメータだけでなく、ART治療成績との関連を調査しました。
EART研究に参加し、2007年から2019年の間に女性パートナーが少なくとも1回のART治療を受けた男性パートナーを対象に、食物摂取頻度調査票を用いて飲料(カフェイン飲料、アルコール飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料)摂取量を調査し、摂取量で4グループにわけ、精子パラメータ(343名の男性の896サンプル)や治療成績(296名の男性の女性パートナーの714周期・IUI:306周期、ART:408周期)との関連を前向きに調査しました。
尚、EARTH研究とは、ハーバード大学の大学病院であるマサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に、治療成績に影響する要因について調査が行われている現在進行中の前向きコホート研究です。
◎どんな結果だったのか?
カフェイン入り飲料、アルコール入り飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料のいずれの飲料の摂取量も、精子パラメータや治療成績(受精、着床、臨床的妊娠、生児獲得)とは関連していませんでした。
ただし、特定の治療方法や飲料種類について関連を調査したところ、ART患者カップルにおいて、カフェインを含むコーヒーや紅茶の摂取量と生児出生確率との間に逆相関が認められました。
最も少な摂取量のグループと最も多い摂取量のグループの生児出生確率は、カフェイン入りコーヒーでは、それぞれ49%と33%、カフェイン入り紅茶では、それぞれ49%と31%でした。
また、アルコール度数の高い酒類の摂取量と生児獲得率についても同様の傾向がみられ、それぞれ45%32%でした。反対に、ビールの摂取量が多いほど生児獲得率が高いという関連も認められ、それぞれ32%と51%でした。
◎男性のカフェイン摂取量とパートナーのART成績の関係
同じハーバード大学の研究グループによる研究で、男性のカフェイン摂取量がパートナーのART成績にマイナスの影響を及ぼすとうう報告がなされています(2)。
ART治療に臨むカップルの男性パートナー171名に治療開始前に、過去1年間の食習慣について質問票に回答してもらい、1日あたりのカフェインの摂取量を調べ、摂取量で4つのグループに分け、被験者の338回の精液検査結果とその後のカップルの205周期の治療成績との関連を調べたというものです。
その結果、カフェインと精液所見は関連しませんでした。
ところが、男性パートナーのカフェイン摂取量は治療成績と関連し、男性がカフェインを多く摂っているカップルほど着床率や妊娠率、出産率が有意に低く、男性パートナーのカフェイン摂取量が最も多かったグループ(≧272mg/day)のカップルと最も少なかったグループ(<99mg/day)のカップルの調整後の出産率は、それぞれ、19%、55%だったというのです。
これらの結果から、ART治療開始前の男性パートナーのカフェインの摂取量が治療成績になんらかの影響を及ぼしている可能性があるということ、また、精子の数や運動率は、必ずしも、男性の妊娠させる力を正確に反映していない可能性があることを示しています。
◎パートナーがART治療を受けている男性へ
今回の結果から男性もカフェインは摂りすぎないように気をつける必要がありそうで、1日にコーヒー2杯程度にしておくのが無難かもしれません。
コーヒー3杯以上(カフェイン300mg以上)飲むと精子DNA損傷率上昇のリスクが高くなる、また、男性パートナーのカフェイン摂取量と流産のリスクが相関したという報告もあります。
不妊原因の半分は男性側にあると言われていますが、男性の検査は、現在のところ、精液検査のみです。
ところが、たとえ、精液検査の結果に問題がなくても、パートナーの治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があるとなれば、不妊原因が女性だけにあるからと言って、また、精液検査に問題がなかったからと言って、男性は関係ないとは、全く、言えなくなってしまいます。
ART治療に臨むカップルの治療前からの食生活やライフスタイルが治療成績になんらかの影響を及ぼすというデータが、徐々に、蓄積されています。
まさに、不妊治療は「ふたりで取り組む」べきものだということになります。
文献)
1)Andrology. 2024 Nov 13. doi: 10.1111/andr.13795. Online ahead of print.
2)Andrology. 2017;52:354
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編集後記____________________________________________________________
男性の妊娠させる力は精液検査結果だけではわからないということですね。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1116
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