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VOL.1119 ラクトフェリンの鉄代謝調整作用

2024年12月08日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1119             2024/12/8
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:ラクトフェリンの鉄代謝調節作用
・編集後記


最新ニュース解説 Dec. 2024__________________________________________

ラクトフェリンの鉄代謝調整作用
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ラクトフェリンは、鉄剤に用いられる硫酸第一鉄に比べて、鉄欠乏性貧血に対して、胃腸障害等の副作用がなく、血清鉄やフェリチン、ヘモグロビン値を改善する効果が大きく、鉄剤よりも優れたサプリメントになり得ることが、最新の研究(1)で明らかになりました。

ラクトフェリンは鉄結合性糖タンパク質で、汗や涙、鼻水、さらには、子宮頸管粘液に含まれ、抗炎症、抗菌作用、免疫調整作用などを発揮し、外敵から私たちの身体を守る役割を担っていると考えられています。

また、初乳に最も多く含まれる栄養素であることから、生まれてまもない乳児の免疫にも深く関与していることがわかります。

ラクトフェリンは、その名前の通り、鉄と結びつく性質があることから、増殖のために鉄が必須の細菌やウイルスを抑制したり、鉄の吸収を正常化し、鉄の代謝調整にも関わっていることが知られています。

そのため、鉄欠乏性貧血の女性がラクトフェリンを服用することで、血清鉄(血中の鉄濃度)やフェリン(貯蔵鉄)、ヘモグロビン(赤血球に含まれる赤色素たんぱく質のことで貧血の指標)が増加し、貧血が改善されるという研究報告が多数なされています。

そのため、この研究は鉄欠乏性貧血対策として、ラクトフェリンと鉄剤に使用されている硫酸第一鉄の改善効果を比較しています。

◎どんな研究だったのか?
システマティックレビュー&メタアナリシスという方法、これまでに同じ目的で実施された複数の研究の結果を統合し、解析して、鉄欠乏性貧血に対するラクトフェリンと硫酸第一鉄の有効性や副作用について比較しています。

◎どんな結果だったのか?
最終的に、19件の論文が抽出され、合計1353人の被験者がラクトフェリン群に、1639人の参加者が硫酸第一鉄群に分けられています。

それらのデータを統合し、解析した結果、ラクトフェリンは硫酸第一鉄に比べて、血清鉄やフェリチン、ヘモグロビンの改善効果が大きく、かつ、硫酸第一鉄では胃腸障害などの副作用が伴うのに対して、ラクトフェリンには副作用は認められず、鉄欠乏性貧血対策として、ラクトフェリンは硫酸第一鉄に比べて優れたサプリメントになり得ると結論づけられています。

◎妊娠希望女性にとっての鉄
鉄は必須微量元素で、酸素の運搬やミトコンドリアでのエネルギー産生 、酵素の働きをサポートするなど、体内で多くに重要な役割を担っています。

そのため、鉄が欠乏すると、人体のあらゆるところで代謝異常が生じることになります。

特に、妊娠を希望する女性にとっては、妊娠後、胎児の成育に伴い、鉄の必要量が増大しますので、妊娠前から鉄不足を解消しておくことが大切です。

特に、貧血を伴う場合は、対策を講じられるものの貧血が伴わない鉄不足は見過ごされがちですので、貯蔵鉄であるフェリチンを測定し、鉄が不足していないかどうかをチェックする必要があります。

◎鉄の減少から鉄欠乏性貧血に至るプロセス
体内の鉄が不足すると、まず、「貯蔵鉄が減少(血清フェリチン12ng/ml以上、25ng/ml未満)」し、貯蔵鉄量と密接に関係する血清フェリチン値が低下します。

続いて、貯蔵鉄が枯渇しているが貧血は生じていない状態である「貧血のない鉄欠乏(血清フェリチン12ng/ml未満、ヘモグロビン12g/dl以上)」となります。

さらに、鉄欠乏が進行すると貧血が起こり、「鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン12g/dl未満)」となります。

◎鉄欠乏性貧血と貧血のない鉄欠乏の診断基準
鉄欠乏の判定には血清フェリチンを用い、貧血の判定にはヘモグロビン値を用います。それらの基準値は以下の通りです。

・鉄欠乏性貧血:ヘモグロビンが12g/dL未満、フェリチンが12ng/mL未満
・貧血のない鉄欠乏:ヘモグロビンが12g/dL以上、フェリチンが12ng/mL未満
・正常:ヘモグロビンが12g/dL以上、フェリチンが12ng/mL以上

要するに、ヘモグロビンが正常される12以上で貧血がなくても、フェリチンが12未満であれば、そのまま妊娠すると胎児の成育にマイナスの影響が出るおそれがあるので、鉄の補充が推奨されるというわけです。

◎鉄は過剰になると酸化ストレスを増大する
鉄が不足していれば、鉄を補充すればいいのですが、鉄補充にはいくつかの問題があります。

まずは、鉄剤は、そもそも、吸収率が低いので、大量に服用する必要があります。そのため、吸収されない鉄も多くなり、便が黒くなったり、胃腸障害が伴うことが少なくありません。

それに対して、サプリメントのヘム鉄は、非ヘム鉄に比べて、吸収率が高く、副作用も、全くないわけではありませんが、非ヘム鉄に比べると、少ないことから鉄剤の代替手段になり得ます。
その一方、鉄は不足しても問題ですが、過剰もよくありません。

もしも、鉄が過剰になると活性酸素を増やすことになり、酸化ストレスが増大し、体内の細胞にダメージを及ぼし、老化を促進することになってしまいかねません。

妊娠希望、特に不妊治療を受けている女性にとっては、そのダメージが卵子に及ぶようなことがあると、本末転倒です。

そのため、鉄はどんどん補充すればよいというわけではありません。

◎ラクトフェリンが鉄の吸収を正常化する
ラクトフェリンは鉄と強く結合するという性質があります。

最近、ラクトフェリンと言えば、子宮内のラクトバチルスを増やし、着床環境を整えることが知られるようになりました。

子宮内のラクトバチルス(乳酸菌)が少ないのは、そもそも、そのような環境、すなわち、悪玉菌が多いということがあるわけで、そこを改善する必要があります。

もちろん、抗菌薬も有効ですが、場合によっては、悪玉菌だけでなく、善玉菌も殺してしまうリスクが伴います。

そのため、ラクトフェリンを増やし、悪玉菌の増殖に必要な鉄を奪い取ることで、悪玉菌を抑制し、善玉菌が増殖しやすい環境をつくります。

もしも、鉄が不足していて、鉄剤や鉄のサプリメントを服用しても、鉄の濃度が上がらないというような場合、鉄の摂取量が少ないからではなく、鉄が吸収されにくい可能性があります。

そのような場合、いくら鉄を補充しても改善されませんし、場合によっては鉄が過剰になり、活性酸素を増やしてしまいかねません。

そこで、ラクトフェリンを摂取し、鉄の吸収を改善することが解決策になるというわけです。

ラクトフェリンは腸内細菌に働きかけ、腸内環境もよくなりますので、鉄剤による胃腸への負担増大とは「真逆」の結果になり、身体全体にも極めて有用です。

フェリチンを測定し、「隠れ鉄不足」をみつけ、ラクトフェリンで鉄不足を改善することは、一石で何丁にもなります。

文献
1)BMC Nutr. 2024; 10: 20.

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編集後記____________________________________________________________

鉄剤や鉄のサプリメントでも貧血や鉄不足が改善されない場合、ラクトフェリンに代えてみてもよいかもしれません。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1119
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