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VOL.1134 音楽が治療成績によい影響を及ぼす可能性

2025年03月23日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1134              2025/3/23
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス: 音楽が治療成績によい影響を及ぼす可能性
・編集後記


トピックス Mar. 2025_______________________________________________

   音楽が治療成績によい影響を及ぼす可能性
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音楽は体外受精や顕微授精を受けている女性のメンタルや治療成績に良好な影響を及ぼす可能性があります。

音楽療法とは、音楽の力を最大限に利用して、心身共に健康に導いていく治療法のこと。

単に、好きな音楽を聴けばいいというわけではなく、音楽療法士によって、それぞれの患者に応じて施されるもので、音楽を聴く受容的音楽療法と、演奏をするなどの活動的音楽療法の2種類に分けられます。

最近、いろいろな医療現場で取り入られるようになり、注目されているようです。

音楽療法が体外受精を受けている女性のリラックス効果や治療成績改善への有効性について調査いた研究があります(1)。

◎どんな研究だったのか?
システマティックレビュー&メタアナリシスと呼ばれている研究方法で、これまで音楽療法のART女性患者へのメンタルや治療成績の有効性を調査した複数の無作為比較対照試験の研究結果を統合し、解析したものです。

◎どんな結果だったのか?
7つの無作為比較対照試験をピックアップし、それらの研究の患者総数は793名でした。

音楽療法を受けた患者は、音楽療法を受けなかった患者に比べて、不安スコアが有意に低く、痛みのスコアは、音楽療法後に有意に改善したというものです。

さらに、治療の総合満足度は音楽療法を受けた患者のほうが有意に改善されたとのこと。

一方、妊娠率は音楽療法を受けた患者のほうが受けなかった患者よりも高かったものの、その差は統計学的に意味のあるレベルではありませんでした。

これらのことから、音楽療法は、妊娠率を劇的に改善するわけでは、もちろん、ありませんが、女性患者のメンタル面や治療成績に良好な影響を及ぼす可能性はあると考えられているようです。

◎体外受精患者の胚移植時のハープ療法の治療成績改善効果
音楽療法の体外受精を受けている患者のメンタル面や治療成績によい影響を及ぼすかもしれないと言われても、なかなか、ピンとこないかもしれません。

そこで、アメリカのペンシルバニア州のアビントンの病院で実施された音楽療法の一種のハープ療法の有効性を調査した無作為比較対照試験(2)をご紹介します。

ART治療で胚移植を受ける181名の女性を、ランダムにハープ療法を受けるグループ(90名)と受けないグループ(91名)に分け、ハープ療法を受ける患者は専門家によるハープ演奏を聴きながら胚移植を受け、受けない患者は、通常の胚移植に臨みました。

全ての被験者は胚移植前後に心理テストとストレス検査を受けました。

その結果、 心拍数や呼吸数、不安感には両グループの間で差は見られませんでした。

ところが、ハープ療法を受けた女性のグループおいてのみ、胚移植前から胚移植後にかけて、胚移植の際に感じる、一時的な不安が小さくなったというのです。

また、ハープ療法を受けた女性グループと受けなかったグループの女性グループの妊娠率は、それぞれ、53%対48%で、ハープ療法を受けた女性のほうが高かったとのこと、ただし、その差は統計学的に有意な差ではありませんでした。

◎音楽のリラックス効果
アメリカでのハープ療法ではハープ演奏を聴きながら、胚移植を受けるというもので、リラックスよりも、胚移植に臨む際の緊張や不安を緩和する効果があったようです。

必ずしも、確実な妊娠率の改善効果があるというわけではありませんが、良好な影響があった可能性はあるだろうとの見解が示されています。

もちろん、ART治療患者への音楽療法は胚移植時だけはなく、さまざまな治療プロセスで、音楽療法が施されているようです。

前述の通り、音楽療法を受けるには、専門の音楽療法士に個別のプログラムを作成してもらい、受ける必要があります。

ただし、まだまだ、一般的になっている代替療法ではありませんので、どこでも受けられるわけではありませんが、音楽のリラックスや不安軽減効果を取り入れることは出来るかもしれません。

アスリートが試合前に音楽を聴いているのを目にされたことがあるかもしれませんが、あれも、本来の力を発揮できるように、試合前の緊張を緩和し、リラックス効果を期待したり、闘争心を掻き立てるために音楽の持つ特有の力を利用しようとしているのでしょう。

不妊治療中のカップルにとっても、体外受精の治療の過程で、どうしても、緊張したり、不安が増大したりすることがあるかもしれません。そんな時には、音楽でリラックスや不安の軽減を試みるとよいかもしれません。


文献)
1)J Psychosom Obstet Gynaecol. 2022; 43: 205.
2)J Evid Based Complementary Altern Med. 2014;19: 93

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編集後記____________________________________________________________

音楽を楽しむ時間をもつということが気持ちの余裕を生みだすのかもしれません。

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