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VOL.1137 妊娠中の朝食を食べる習慣は出生児の神経発達に影響する

2025年04月13日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1137              2025/4/13
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説: 妊娠中の朝食を食べる習慣は出生児の神経発達に影響する
・お知らせ:AIを活用したスマホ用 Webアプリ『精子力チェッカー』
・編集後記


最新ニュース解説 May. 2025________________________________________

 妊娠中の朝食を食べる習慣は出生児の神経発達に影響する  
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妊婦の朝食を食べる習慣は、出生児の神経発達、具体的にはコミュニケーションや他人とのやり取りに関する能力の異常が減少する可能性があることが福島県立医科大学によるエコチル調査で明らかになりました。

妊娠中の栄養摂取が出生児の神経発達に影響するという研究報告は数多くなされていますが、朝食を食べる習慣があるかどうかの影響については、これまで調べられていませんでした。

実は、朝食を食べるかどうかは、食事全体の質や健康的なライフスタイルに関連することがわかっています。

要するに、毎日、朝食を食べる人は、食事全体の質が高く、ライフスタイルも健康的な人が多いというわけです。

そこで、福島県立医科大学の研究グループは妊婦の朝食を食べる習慣の有無と出生児の3歳時点での神経発達の関係を調べることになったとのこと。

因みにエコチル調査というのは、赤ちゃんが母親のお腹の中にいるときから健康状態を定期的に調べる、出生コーホート(集団を追跡する)調査のことで、環境省が実施する大規模な国家プロジェクトで、全国15地域、10万組の子どもたちとその両親が参加しているそうです。

◎どんな研究だったのか?
エコチル調査に参加した、72,260人の妊婦とその出生児を対象に、まずは、妊娠中に実施した食事調査から、朝食の摂取習慣があるかどうか、それに加えて1日の総エネルギー摂取量を調べました。

一方、出生児の3歳時点での神経発達状況は、ASQ-3(Ages and Stages Questionnaire・第3版)を用いて調べました。

ASQとは、コミュニケーション、粗大運動(腕や足などの大きな筋肉を使う動き)、微細運動(手指の細かい動き)、問題解決(手順を考えて行動するなど)、個人と社会(他人とのやり取りに関する行動等)の5つの領域について、両親の回答をもとに子どもの発達をスコア化し、評価する質問形式のスクリーニングツールです。

5つの領域でスコアの基準値が定められています。

◎どんな結果だったのか?
毎日の朝食習慣がある妊婦のグループ(53,124名)は、朝食習慣がない妊婦のグループ(19,136名)と比べて、出生児の 3 歳時のコミュニケーション領域で基準値を下回る頻度が13%低いことがわかりました。

また、1日の総エネルギー摂取量と出生児の性別で解析してみると、1800kcal 以上のグループでは、朝食摂取習慣がある妊婦では出生児が他人とのやり取りに関する能力のカットオフ値を下回る頻度が16%低いこともわかり、摂取エネルギー、さらには、出生児の性も影響することが認められました。

このことから、朝食は 1 日の栄養摂取において重要な役割を果たしており、妊婦の食事の質が向上することで、胎児にも神経発達に重要な栄養素の供給が増加し、精神神経発達に良い影響を与えたのではないかと考えられるとしています。

◎妊娠中の食事パターンと出生児の神経発達
これまでl、妊娠中の食事パターンが出生児の神経発達に影響するとの研究報告がなされています。

中国安徽省の馬鞍山母子保健センターで初回妊婦健診を受診した1423名の女性(18歳以上で自然妊娠)とその出生児を対象とした研究で、妊娠中の母親の5つ食事パターンと出生児の3歳時点での神経発達との関係を調べています。

その結果、妊娠中に高タンパクで微量栄養素を多く含む食事パターンの母親の子どもは、粗大運動や問題解決のスコアが高く、神経発達が良好であったとのこと。

また、低鉄分の食事パターンの母親から生まれた子どもは、神経発達が不良で、妊娠後期に低鉄分の食事パターンだった母親を持つ子どもは、コミュニケーションスコアが低いこともわかりました。

◎朝食を食べる習慣と不妊治療成績の関係
朝食を食べる習慣は不妊治療の成績にも良い影響を与える可能性があることが、東京医科大学を中心としたグループの研究でわかっています。

東京医科大学による研究で、117名のART女性患者を対象に、食事内容に関するアンケートに答えてもらい、不妊治療開始前1年間の朝食の摂取回数を調査、またカルテから得られた年齢やBMI、喫煙、飲酒、分娩歴、AMHとその後の治療成績との関連を調べています。

その結果、朝食を食べる習慣(週に6~7回)は、食べない週間(週に5回以下)に比べて出産にまで至った女性の割合が高く、流産率は低いことがわかったというのです。

このことから、不妊治療を受ける女性は朝食を習慣的に食べることが不妊治療に良い影響を及ぼす可能性があることがわかりました。

◎朝食を食べて一日をスタートする!
「朝食」は、単に朝に食べる食事であるということだけでなく、重要な役割を担っています。

まず、朝食は体内時計をリセットします。体内時計は生体リズムの司令塔で、女性の生殖機能はリズムとタイミングが全てと言っても過言ではありませんので、朝食の欠食は生体リズムのずれを生じさせるリスクを伴います。

また、朝食を食べることで1日の食後の血糖値が安定します。そのため、朝食を抜くと昼食後と夕食後の血糖値が高くなり、糖尿病の発症率が高くなることが知られていますし、食後高血糖は卵胞発育によくない影響を及ぼします。

さらに、朝食は体温を上げます。体温は朝に最も低くなり、起床後、徐々に上がっていきますが、朝食を食べることで「熱」が産生され、体温が「スムーズに」上昇します。

このように朝食の欠食が、ボディーブローのように生殖機能にダメージを与えることがイメージ出来ると思います。

朝食と新しい生命を妊娠、出産する力は、さまざまなメカニズムで繋がっているようです。

自分で自分の妊娠力を守るためには、早く寝て、早く起き、朝食を食べることが大切です。

それは、気持ちよく1日をスタートすることに他なりません。

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お知らせ__________________________________________________________
 
AIを活用したスマホ用 Webアプリ『精子力チェッカー』
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「精子凍結みらいバンク」を運営するH D Xセルバンク株式会社は、男性の精子力をスマートフォンで簡単に見える化できる「精子力チェッカー」をリリースしましたのでご紹介します。

このWebアプリは、スマートフォンから年齢や身長、体重などの基礎データを入力し、生活習慣に関する簡単な質問に答えるだけで、AIが精子力を数値化し、コメントを提供してくれる便利で楽しいツールです。

ゲーム感覚で利用できる「精子力チェッカー」は、男性がプレコン健診に対する心理的ハードルを下げるとともに、プレコン健診への動機付けとなることが期待されています。

◎スマホ用「精子力チェッカー」
https://easycheckmed.com/seishi-checker/

編集後記____________________________________________________________

妊娠に至るまでの時間がかかることは、結果としてプレコンセプションケアを実践したということになりますね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1137
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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