葉酸摂取による先天性障害予防効果

生活習慣・食事・サプリメント

2004年10月06日

BMC Pregnancy and Childbirth 2004/09/27

カナダ政府が、1998年にパスタやシリアルなどの穀類製品への葉酸の添加を義務づけた前後の新生児の神経管閉鎖障害の発生状況を調査した研究発表が、このほど専門誌に掲載されました。

それによると、 新生児への神経管閉鎖障害の発生率が北米で最も高い、ニューファンドランド、及びラブラドール州では、1998年以降、発症数は、78%減少したとのことです。発生率では、1991年から1997年までの義務付け以前は、新生児1,000人当たり4.35人であったのに対して、1998年から2001年までは、平均0.96人と激減しています。

コメント

葉酸の新生児の神経管障害予防効果が判明したのは比較的最近のことです。
アメリカで、1980年代頃から葉酸の研究が盛んになり、1991年からは、アメリカの政府機関である疾病管理予防センター(CDC)は、葉酸を摂取することの重要性を啓蒙し始めています。
そして、2001年6月20日の医学会誌「JAMA」に、1日最低400μgの葉酸の摂取が新生児の神経管障害を70%近く軽減するという論文が、発表されてから全世界で話題となり、注目されるようになりました。

1996年には、栄養強化をうたうすべてのパンやシリアル等に葉酸の添加を義務づけています。
イギリスや今回の記事のカナダもこれにならいました。

日本では、2000年12月28日に厚生省から、神経管閉鎖障害の発症リスク低減のため妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取にかかる適切な情報提供の推進についてという通達がなされ、葉酸摂取を推奨するようになりました。

葉酸はグレープフルーツ等の柑橘類、豆類、小麦や穀物類のふすま、濃緑野菜、海老、カニ、豚肉等に含まれていますが、調理中に壊れやすく、食事から必要量を摂取することは困難とされ、1日に400μgの葉酸を吸収率の良いサプリメントから摂取することが勧められています。

※神経管閉鎖障害とは(国立栄養・健康研究所の葉酸情報より転載)
神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄などの中枢神経系のもと(神経管)が作られる妊娠の4~5週ごろにおこる先天異常です。我が国では、出生した赤ちゃん1万人に対して約6人の割合でみられます。神経管の下部に閉鎖障害が起きた場合、これを「 二分脊椎 」といいます。二分脊椎の起きた部位では、脊椎の骨が脊髄の神経組織を覆っていないため、神経組織が障害され、下肢の運動障害や膀胱・直腸機能障害がおきることがあります。神経管の上部で閉鎖障害が起きると、脳が形成不全となり、これを「 無脳症 」といいます。無脳症の場合、流産や死産の割合が高くなります。