これまで不妊治療医を悩ませてきた体外受精児の健康リスクの要因が明らかにされたようです。
体外受精によって出生した子供は、自然妊娠で出生した子供に比べて、早産や未熟児で生まれる割合が高く、出生後、病院でケアを必要とするケースも多いとされていますが、その原因が明確には知られていませんでした。
調査結果からは、単一胚移植は母体によっても、子供にとってもベストな選択であり、自然妊娠で生まれた子供と全く同じであるとしています。
いくつかの国では、妊娠率を高めるために、2個、またはそれ以上の胚を子宮に戻しています。
ところが、同時に、多胎妊娠の確率も高まり、母体や子供の健康リスクになっていました。
調査研究は、251の単一胚移植によって妊娠、出生した子供と、自然妊娠によって出生した子供を比較することによって実施されました。
コペンハーゲン大学の研究者によりますと、体外受精時の単一胚移植と複数個胚移植による出生児の健康状態の違いは、子宮内の"競合"によるものであると指摘しています。
複数個の胚を移植すると、子宮内で母親から血液によって供給される栄養素を取り合うために、たとえ、最終的に1人の子供が出生したとしても、単一胚と複数個の胚とでは栄養的な環境が異なるとのこと。
体外受精時に移植される胚の平均的な数は、国によって、まちまちです。
ヨーロッパでは単一移植が12%ですが、
2個は、2000年から2001年かけては、46.7%から51.7%へ増加しています。
3個の移植は、33.3%から30.8%へ、
4個の移植は、6.7%から5.5%へ、それぞれ減少しています。
コメント
この報告の意味することは大変重要です。
もともと、移植する胚の数を少なくすることの重要性は、多胎妊娠防止という観点から、十分に認識されていたように思います。
ただ、日本の現状は、日本産科婦人科学会では3個までとしており、女性の年齢やそれまでの治療歴や施設や医師の方針にもよりますが、2個から3個、場合によってはそれ以上、というのが一般的です。
さらに、妊娠できるのであれば双子は許容できるという心理状態もあります。
ところが、今回の報告では、体外受精による早産や低体重児のような健康リスクは、子宮内での胚同士の競合関係による栄養不良が考えられるとすれば、今後は、選択的単一胚移植が、ますます、重要視されるのではないでしょうか。
いずれにしても、不妊治療は、"量"から"質"の追求という時代であることは、間違いないところです。
セルフによる"妊娠しやすいカラダづくり"も質の向上に大きく寄与するものと考えます。