調査は、大学病院で体外受精を受けている患者を、選択的単一胚移植グループ(41名)と2個胚移植グループ(66名)に分けて、238のサイクルの着床率や妊娠率、多胎率を調べました。
その結果、 1個の胚盤胞を移植したグループと2個の胚盤胞を移植したグループの間では、妊娠率においては、明確な違いは見られませんでした。双子の妊娠率は顕著に減少しました。
コメント
1個の胚盤胞を移植するのは、体外受精における最大のリスクである多胎妊娠を減らすためです。
日本では移植する胚の数は3個までと学会のルールで決められていますが、複数の胚を移植するのは、やはり、ある程度の妊娠率を維持したいことに尽きます。
ですから、双子や三つ子の多胎妊娠のリスクが高まることは、半ば、覚悟の上で、治療を施していたと言えます。
患者側にとっては、それまで、子供が授からないことに悩んできたわけですから、逆に、双子を授かることは歓迎するようなメンタリティーもなきにしもあらずです。
ところが、近年、高度な生殖医療の多胎妊娠のリスクを低下させることが、さまざまな観点から求められ、胚の培養技術や優良な胚を選択する技術が高まりとあいまって、特に、ヨーロッパ、中でも北欧から1個の胚盤胞を移植することが取り入れるようになりました。
日本でもクリニックによっては導入、実施されているところも徐々に増えているようです。
今回の調査結果は、移植する胚の数が多ければ多いほど、妊娠率が高まるわけではないことを明らかにしています。
多胎妊娠のリスクが大きく低下し、かつ、高い妊娠率を維持できるとなれば、単一の胚移植に越したことはあません。
ただし、母親になる女性の年齢や不妊原因等の条件にもよります。