CDCの9回目の高度生殖補助医療レポートは、全米高度生殖補助医療実施399施設の治療成績を公表しています。
それによりますと、新鮮胚(提供卵子でない)移植の分娩率は28%でした。
2003年の報告は、自分の卵子を使った体外受精の成績を左右する最も重要な要因は、母親になる女性の年齢であることを明らかにしています。
CDCの生殖医療部門のヴィクトリア・ライトさんは、「母親になる女性が20代や30代であれば、比較的高い成功率が得られていますが、30代も半ばを超えると成功率は著しく低下してしまいます。」と分析しています。
35歳以下の女性の成功率は37%ですが、35~37歳になると30%に低下、38~40歳では20%、さらに、 41~42歳で11%、42歳以上では4%になってしまいます。
母親になる女性が40歳を超えた場合、20代や30代の女性から卵子の提供を受ければ高い成功率を得ることが可能です。卵子の提供を受けた場合の分娩率は母親になる女性の年齢に関係なく平均50%です。
また、自分の卵子を使った体外受精で生まれた子供の35%は多胎児でした。一般の多胎率は3%で、複数の胚を戻すことために多胎率が高まることが分かります。多胎は、帝王切開や低体重児、早産等が増加し、母子の健康リスクを高めます。
このような全体傾向は前年の調査報告とほぼ同様でした。
ヴィクトリア・ライトさんは、「不妊に悩むカップルが増えていますが、1981年にスタートした高度生殖補助医療は多くの女性の夢を叶えてきました。多くのカップルが、CDCの報告を不妊を克服する上で、選択肢を選ぶ際の材料としています。」
さらに、「高度な生殖医療を受けるということは、いろいろな施設の治療成績を慎重に比較検討し、専門家と相談した上で、カップル自身が決定すべきです。クリニックの治療成績は決断するうえでの1つの要素であって、不妊の原因や母親になる女性の年齢も同様に需要な要素です。」と述べています。
※CDCとは?
日本の厚生労働省にあたるアメリカのHHS(Department of Health and Human Services)の下部組織。
コメント
アメリカでは、日本と異なり、全ての高度生殖補助医療の実施施設(クリニックや病院)の治療成績が、日本の厚生労働省にあたる役所の下部組織であるCDCという公的な機関が、毎年、監督官庁となって、公表しています。
その仕組みを説明しますと、CDCは、アメリカ生殖医学会(ASRM : the American Society for Reproductive Medicine) の関連学会、体外受精学会(SART : the Society for Assisted Reproductive Technology)に対して、高度生殖補助医療のデータの収集とそのチェックを委託し、毎年、CDCから、全国の統計と個々のクリニックの治療成績を公表しています。
また、CDCは、関連学会の協力のもとに、それぞれのクリニックの外部監査を実施しています。
さらに、患者団体であるRESOLVEの活動を支援しています。
このように、アメリカでは、不妊に悩むカップルが、不妊治療を受けることを検討し、決断する際に、また、どのクリニックで治療を受けるかを選択する際に、判断し、選ぶ材料すべき情報が、公的な機関が責任をもって公表されているのです。
このような情報開示の徹底と施設の監査は、とりもさおざず、不妊治療という、肉体的、精神的、経済的に重いリスクのかかる治療を受ける患者の権利の保護に他なりません。
それに比べると、日本は、情報を収集しても、開示していません。
さらに、各施設は登録さえすれば、あとは、野放し状態です。
ですから、いざ、不妊治療を受けようと、クリニックを選ぼうと思っても、選ぶための情報がないわけで、クリニック選びが、運と個人のカンに頼らざるを得ないのが現状です。
これでは、不妊患者の立場は全く弱いもので、患者の権利が保護されているとは到底いえないものです。
現実は、そのように厳しいものがありますが、今回、発表されたアメリカの情報を参考にできるところは参考にして、自己防衛を図るしかないのではないでしょうか?