この発見は、男性不妊や新たな避妊の方法の研究に役立つものと期待されているようです。
ハイパーアクチべーションは、女性の生殖器官内がアルカリ性であることが引き金になること、そして、精子に尻尾に存在するたんぱく質遺伝子「CatSper1」がかかわっていることは、既に、これまでの研究で明らかになっていました。
今回の研究では、そのより詳細なメカニズムを明らかにしています。
そのための実験は、精子の細胞内の電流を測定するパッチクランプ法とよばれる方法を、導入して実施されました。
その結果、CatSper1は、細胞内のアルカリ化によて、精子の尻尾のカルシウムの濃度を調整していることが判明しました。
そして、尻尾へのカルシウム濃度の上昇が、ハイパーアクチべーションを起こさせると考えられています。
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精子が卵子と出会い、受精が成立するためには、精子は以下のステップを踏む必要があります。
・精子の受精能の獲得 → ・先体反応 → ・ハイパーアクチべーション → ・透明帯貫通
今回の研究では、上記のプロセスのうちの「ハイパーアクチべーション」のメカニズムの一端が、明らかにされたようです。
■受精能の獲得とは
精巣の中や射精直後の精子には受精能力はないのですが、精子が膣内に射精されてから、頸管、子宮、、卵管等の女性の生殖器官に一定期間とどまるうちに、受精可能な状態になることを言います。人間の精子の場合で、だいたい、5~6時間と言われています。
■先体反応とは
精子の先体が卵の透明帯に接触することが刺激となって起こる反応のこと。先体が崩壊して、それに含まれるアクロシンなどのタンパク分解酵素が放出される現象です。それによって、透明帯に進入の通路が作られます。
※参照文献:不妊治療ガイダンス(医学書院)