不妊治療による多胎妊娠の増加ではなく、あくまで、自然なサイクルでの自然妊娠での二卵性双生児の出産率についてです。
オランダのアムステルダムのVrije Universityの研究チームは、500人以上の卵胞の成長を調べることで、その原因を突き止めました。
一卵性双生児は、1つの受精卵から双子になりますが、二卵性双生児は、別々の2つの受精卵が育ち、双子の中の4分の3以上を占めています。
自然なサイクルでは、卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、卵巣を刺激し、卵胞を成熟させます。そして、1つの卵胞が成熟すれば、分泌量は低下します。
オランダの調査は、959の自然なサイクルで、卵胞の成長を調べました。
その結果、105人の女性に、14mm以上の卵胞が複数成長していることが分りました。
複数の卵胞が育っていた105人の女性のうち、30歳以下はたった5人で、30~35歳が45人、35~55歳が35人でした。
FSHは、成熟した卵胞が1つであろうと、複数であろうと、高齢になればなるほど、濃度が高い数値を示していますが、数値が高い女性ほど、複数の卵胞が育っていたことが分りました。
38~48歳の閉経前には、視床下部は、数すくなくなった良質の卵を育てようと、どんどんFSHを分泌するようになります。
調査では、女性によっては、FSHの分泌量が、1つの卵を育てるのに最低限必要な量を超えて分泌されていたことが分ります。
ほとんどのケースでは、年齢による卵の質の低下によって、多胎妊娠にはならないものと考えられますが、たまたま、良質の卵が複数育った時に双子の妊娠になるものと思われます。
調査を主導した研究者は、高齢の女性では、卵子になるべき卵細胞の量と質、ともに、低下するため、妊娠しづらくなっていきます。
ただし、それと同時に、双子の妊娠率も、また、高くなる事実があります。このような逆説的な現象を、これまでの研究では、十分に解明されていませんでした。
生殖医療の専門医は、調査は、実際には、不妊治療医が、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激したり、体外受精時に複数の卵を育てたりすることを、自然の摂理は、行っているということを明らかにしたのではないかと指摘しています。
仕事のキャリア等で高齢になってから子作りを始めた女性にとっては、生殖力の低下を補ってくれる自然のメカニズムは、心強い限りではないでしょうか。
コメント
大変興味深い内容と言えます。
不妊に悩む夫婦にとっては、母親になる女性の年齢、そして、それに伴う卵子の老化は、最大の心配事であると言ってもよいかと思います。
高齢にともなう、FSHの数値の高まりも、卵巣の機能の低下の指標としてしか考えないものです。
ところが、今回の報告でも明らかにさえれているように、FSHの高まりは、低下する生殖力を補う自然のメカニズムなのです。
決して、一面だけをみて、高齢を嘆くことはないのではないでしょうか。
人間に備わった自然な力をもっと信じたいものと、痛切に感じました。