単一胚移植とは、 体外受精において、母子ともに健康リスクの高い多胎妊娠を避けるために、子宮に戻す胚の数を1個にすることです。
ベルギーの研究グループは、351名36歳以下の不妊の女性を、無作為に2つのグループに分け、
176名は、受精から3日目の胚を1個移植し、
175目は、受精から5日目の胚盤胞を1個移植し、成功率を比較しました。
その結果、妊娠、出産できた女性の割合は、
3日目の胚を1個移植したグループでは21.6%、
5日目の胚盤胞を1個移植したグループでは32%とだったとのことです。
コメント
通常、子宮に戻す受精卵の数を多くするほど、妊娠率が高くなるのですが、体外受精による最大のリスクの1つである多胎妊娠も多くなることが、ある意味、体外受精の"泣き所"であり、ジレンマでありました。
現実には、妊娠の実現のためには、ある程度、多胎妊娠が増えるのは、致し方ないと考えられていた節もあり、自然妊娠においては、多胎妊娠は2%であるのに対して、体外受精では20数%と言われています。
このようなジレンマの中で、多胎妊娠のリスクを低くするために、妊娠率を下げることなく、1個の胚移植を試みることが、世界的な関心事となっています。
そのためには、出来るだけ生命力の強い胚を移植することが最大のポイントです。
生命力の強い胚かどうか、要するに、質のよい胚かどうかを見分けるのは、胚の形態をチェックするのですが、そのような"見た目"だけでは、実際のところ、不十分でした。
そこで、培養技術が高くなってきたこともあって、5日目の胚盤胞まで、順調に分割して成長するに至った胚が、すなわち、生命力の高い胚であると考え、また、本来であれば、着床する直前の5日目まで体外で培養して移植するのが、タイミング的にも理想的であるとして、5日目の胚を移植して高い着床率を得ようとするのが胚盤胞移植です。
今回の試験に結果は、そのことを証明していることから、今後の体外受精においては、5日目の胚盤胞の単一移植が、ますます、注目されることとなると思われます。