鉄分の過剰が子宮内膜症を悪化させる可能性

不妊改善・生殖医療関連

2006年07月28日

Human Reproduction

ベルギーのCatholic University of LouvainのJaques Donnez教授の研究チームは、鉄分の排泄効果のあるキレート剤(親鉄剤)が、子宮内膜症の治療に使えるかも知れないと、生殖医療専門誌「Human Reproduction」に発表しました。

これまで、子宮内膜症の原因は明らかになっていませんでしたが、Jaques Donnez教授らは、子宮内膜症の患者の骨盤内に、高い濃度の鉄分が認められたことから、鉄分の過剰が子宮内膜症を悪化させているのではないかと考え、マウスによる試験を実施しました。

同じ程度の子宮内膜症のマウスを3つのグループに分けて、1つのグループには鉄分を含む赤血球を加え、もう1つのグループには、鉄とくっついて排泄する働きのあるキレート剤を与え、最後のグループには、対照グループとして、何もしませんでした。

その結果、鉄を与えたグループのマウスは、対照グループのマウスに比べて、内膜症の病変が大きくなり、それに比べて、キレート剤を投与されたグループのマウスは、病変が小さくなったことが明らかになりました。

このことから、鉄分は、マウスの子宮内膜症の病変を成長させたと結論づけました。

そして、鉄分のキレート剤が子宮内膜症の治療に使える可能性が出てきたとしています。

専門家は、画期的な発見ではあるが、マウスによる試験であることから、すぐに、人間にも有効であるとは言いづらく、さらなる研究が必要であると指摘しています。

コメント

子宮内膜症は、その病変の場所や程度によっては、不妊の原因になり得ます。

ところが現段階では、手術で病変を切除したり、癒着を剥がしたりする外科的な治療しか、有効な対策はありません。

薬によって月経を止めれば、痛み等には有効とされていますが、それによって、妊娠率があがることは、さほど、期待できないという報告もあります。

今回の報告は、マウスによる試験結果ではありますが、鉄の影響が示唆されています。

これまでも、たとえば、肉や乳製品をたくさん食べる人ほど子宮内膜症になりやすいとか、逆に、野菜や果物をたくさん食べる人ほどなりにくい、或いは、アレルギー体質が内膜症を引き起こすのではという報告があります。

セルフケアをという観点からは、いろいろな対策が講じれるかも知れません。

キーワード