これまで、子宮内膜症の原因は明らかになっていませんでしたが、Jaques Donnez教授らは、子宮内膜症の患者の骨盤内に、高い濃度の鉄分が認められたことから、鉄分の過剰が子宮内膜症を悪化させているのではないかと考え、マウスによる試験を実施しました。
同じ程度の子宮内膜症のマウスを3つのグループに分けて、1つのグループには鉄分を含む赤血球を加え、もう1つのグループには、鉄とくっついて排泄する働きのあるキレート剤を与え、最後のグループには、対照グループとして、何もしませんでした。
その結果、鉄を与えたグループのマウスは、対照グループのマウスに比べて、内膜症の病変が大きくなり、それに比べて、キレート剤を投与されたグループのマウスは、病変が小さくなったことが明らかになりました。
このことから、鉄分は、マウスの子宮内膜症の病変を成長させたと結論づけました。
そして、鉄分のキレート剤が子宮内膜症の治療に使える可能性が出てきたとしています。
専門家は、画期的な発見ではあるが、マウスによる試験であることから、すぐに、人間にも有効であるとは言いづらく、さらなる研究が必要であると指摘しています。
コメント
子宮内膜症は、その病変の場所や程度によっては、不妊の原因になり得ます。
ところが現段階では、手術で病変を切除したり、癒着を剥がしたりする外科的な治療しか、有効な対策はありません。
薬によって月経を止めれば、痛み等には有効とされていますが、それによって、妊娠率があがることは、さほど、期待できないという報告もあります。
今回の報告は、マウスによる試験結果ではありますが、鉄の影響が示唆されています。
これまでも、たとえば、肉や乳製品をたくさん食べる人ほど子宮内膜症になりやすいとか、逆に、野菜や果物をたくさん食べる人ほどなりにくい、或いは、アレルギー体質が内膜症を引き起こすのではという報告があります。
セルフケアをという観点からは、いろいろな対策が講じれるかも知れません。