また、精液が正常なケースにおいて、顕微授精を実施することのメリットがあるとしても、それが、どのようなものかは不明であるとしています。
研究チームは精液が正常であると診断されたカップルの696周期を評価しました。
その結果、周期あたりの受精した卵子の個数は体外受精のほうが多かったものの、受精率や妊娠率、そして、出産まで至った確率には差はみられませんでした。
研究チームは体外受精か顕微授精かを無作為にグループ分けしたわけではないこと、また、顕微授精を受けたカップルは、 体外受精を受けたカップルに比べて、比較的難治性の不妊症であった傾向が否定できないものの、明確な証拠はなければ、より高いコストがかかり、リスクが高まる可能性がある顕微授精を、高度生殖補助医療の第一選択肢にするのは難しいと結論付けています。
コメント
たとえ精液が正常なケースでも、体外受精で受精が難しい受精障害であれば、顕微授精を実施することで受精障害は克服でき、また、体外受精では全ての卵子が受精しないケースがあるのに対して、顕微授精ではそのようなケースは少ないと報告されています。
ですから、卵子側に何らかの問題が存在する場合でも、顕微授精でクリアできるケースがあるということで、精液が正常であれば、必ずしも、顕微授精を実施することが無意味であることはありません。
そんな観点から考えると、後々、やっぱり顕微授精にしておけばよかったという後悔をしないために、全て顕微授精にしたほうが確実であるという考え方も出てくるかもしれません。
ただし、今回の研究報告で指摘されているように、コストやリスクの問題も考慮に入れて考える必要があります。
いずれにしても、精液が正常なケースであれば、治療前に顕微授精でなければ受精できないのかどうかを判別する方法はないわけですから、大変難しい問題です。
それそれのケースで最適な方法を選択するためには、やはり、ドクターとよく相談することが大切なように思われます。