研究チームは1985年以降の片側、両側の精索静脈瘤への手術療法の効果について、5つの文献を統合、分析しました。
精索静脈瘤の病態は、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤がみえるグレード3は、手術を受けたグループでは9.5%、対照群では34.3%で、立った状態で容易に触知できるグレード2は、手術を受けたグループでは54.4%、対照群では21.8%、そして、立った状態で腹圧をかけてはじめて静脈の怒張を触知できるグレード1は、手術を受けたグループでは36.2%、対照群では43.7%でした。
そして、手術を受けたグループ(396名)では131名が自然妊娠し(33%)、対照群(174名)では、27名は自然妊娠(15.5%)し、手術を受けたグループのほうが、約2倍の自然妊娠率を得られました。
このことから、触知できるほどの精索静脈瘤に伴う精液の質の低下による男性不妊のカップルにとっては、手術療法は効果的な治療法であるといえると結論づけています。
コメント
精索静脈瘤とは、男性の精巣の静脈に血液が逆流して、静脈が広がり、細長い瘤のようになる病気のことです。
寝ている時はわかりませんが、立ち上がると、徐々に大きくなり、はっきりすることが多いようです。
そして、この静脈瘤が原因で陰嚢内の温度が上がるために、精子に悪影響を及ぼすことから、男性不妊を招くことがあります。
不妊でない男性でも約20%、不妊患者では約21~39%と、とても高い頻度でみられるとされています。
男性不妊としての治療法は、精液所見の程度にもよりますが、手術療法になります。
手術療法の効果については、2003年に発表された7つの論文によるメタアナリシスでは、手術療法は有効でないと結論づけたことから、その効果を疑問視する専門家も少なくありません。
また、女性の年齢によっては、手術後、自然妊娠を期待するという方法は得策でないこと、さらには、高度な不妊治療が一般化するに伴い、始めから体外受精や顕微授精を受けたほうが確実ではないかという考え方もあります。
いずれにしても、精索静脈瘤による男性不妊の治療方法を検討する場合には、今回、手術療法は有効であるとのメタアナリシスの結果が発表されていますが、総合的に判断することが大切です。
※メタアナリシスとは?
複数の試験から得られた情報を1つにまとめること。通常、異なる研究の間にはさまざまな違いが存在するものですが、すべての患者が同一の条件による試験に参加したと仮定することで、被験者グループと対照群の人数を出来るだけ多くすることで、より精度の高い結果を求めようとする研究方法のことです。