精子をつくるのに不可欠な遺伝子が発見される

基礎知識

2007年10月25日

Nature

精子がつくられる最終過程で不可欠な遺伝子を、実験用のねずみを使った実験で確認出来たことから、人間にも同様の遺伝子が男性不妊の原因になっている可能性があると、アメリカの研究者がNature誌に発表しました。

この遺伝子を欠損させた実験用の雄のねずみは、極端に精子の数が少ないうえに、受精能力がなく、不妊であることが確かめられました。

ノースカロライナ大学のYi Zhangは、この遺伝子は精子の機能を形成するうえで特別な働きをしており、将来的に一部の男性不妊患者への治療のカギになるかもしれないと指摘しています。

コメント

精子がつくられる過程をごく大雑把に説明しますと、そのプロセスは、 精子形成(sprmatogenesis)と精子発生(spermiogenesis)の2つに分けられます。

前半の精子形成過程では、精子になる元の細胞が分裂を繰り返し、精子細胞になります。そして、後半の精子発生過程では、その精子細胞が精子に成熟します。

Nature誌に発表された今回の研究報告では、後半の精子が成熟する過程で、特別な働きをする遺伝性を突き止めたとしています。

ただし、ねずみによる実験のうえでのことですから、まずは、人間にも同様の遺伝子が働いているのかどうか、そして、もしも、その遺伝子の欠損が無精子症の原因の1つであるのであれば、治療薬の開発に結びつく可能性を期待できるのではないかということです。

実際のところ、精子の数が少ない、乏精子症にしろ、精子が存在しない、無精子症にしろ、根本的な原因が分からないケースが少なくありません。

当然、決定的な治療法がないわけですから、精液の妊娠させる力の低さを、女性への人工授精や体外受精、顕微授精といった治療でカバーすることが、妊娠を目指すためには、現実的な方法にならざるを得ません。

ただ、やはり、精子のつくる機能が低下しているわけですから、そのことを治療することが可能であれば、自然妊娠できる可能性も高まるわけですから、今後の男性不妊への確実な治療法の確立に期待したいところです。

キーワード