PCOSの治療方針

不妊改善・生殖医療関連

2008年03月17日

Fertility and Sterlity

2007年3月にギリシャで開かれた、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群) の専門家会議で、討議、合意された、PCOSによる不妊患者への治療方針が、このほど、生殖医療専門誌に発表されました。

この会議はヨーロッパ生殖医学会やアメリカ生殖医学会、製薬会社の協賛で開かれました。

会議では最新の有用なエビデンスに基いて、治療方針が見直されました。

・治療を開始する前に禁煙や過剰な飲酒などの生活習慣の改善、特に、肥満女性にはダイエットや運動に取り組むことの大切さを強調することが大切である。

・排卵誘発剤の第一選択薬はクロミフェンを使う。

・クロミフェンが効かない、または、排卵しても、一定期間妊娠しない場合は、ゴナドトロピン療法、もしくは、腹腔鏡下手術を選択する。

それそれの治療法の長所短所を踏まえて、それぞれの患者に相応しい方法を選択すべきとしています。

ゴナドトロピン療法は、多胎妊娠の確率が高くなるので、卵胞の発育状態を常にチェックすることが必要であることを指摘しています。

腹腔鏡による手術だけでも50%弱の女性に有効であるが、排卵誘発剤(クロミフェン-ゴナドトロピン療法)を使うことは大変有効で、累積の出産率(多胎でない)は72%にもなるとのこと。

・3番目の選択肢は体外受精を実施する。

PCOSのの病態や程度は患者によって大きく異なることから、治療法は、それぞれの患者の状況に相応しい方法を選択されるべきで、上記のいずれにも当てはまれない可能性もあるとしています。

また、耐糖能異常の女性には、メトフォルミン(糖尿病薬)は使用すべきでない。

そして、メトフォルミンやアロマターゼ阻害薬を、通常的に排卵誘発目的に使用することは勧められないとしています。

コメント

PCOSは、排卵障害や無排卵による不妊の原因としてよくある病気の1つです。

ただし、多嚢胞性卵巣だからといって、必ずしも、無排卵や排卵障害になるわけではなく、また、たとえ、不妊の原因になったとしても、その程度は、軽いものから、重いものまで、さまざまなようです。

また、そもそも、病気の状態さえ、一定ではないと言われていることから、PCOSの治療は、それぞれの患者に応じて施されることが大切であると、今回の報告においても強調されています。

ですから、単に、排卵誘発剤で排卵を起こせばよいのか、或いは、PCOSの原因となる病気を治療するのがよいのかを判断したり、排卵誘発剤を使う場合でも、多胎やOHSSなどの副作用を発症しやすいことから、よりカスタムメイドな治療が必要になってきます。

PCOSと診断されたら不妊を専門とする経験豊富な先生にかかることも大切です。

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