イスラエルのBarzilai Medical Centerの医師グループは、2,760周期の体外受精のうち臨床的に妊娠が確認された602周期を対象に調査しました。
その結果、1~3回目までは周期あたりの妊娠率は25.2%だったのが、4~6回目になると17.8%に低下するものの、7~9回目では17.5%、10~12回目では13.0%、12回以上では11.2%と、4目以降は回数が増えても、妊娠率は大きく下がらないことが分かりました。
この結果から研究チームは体外受精を数回で止めてしまうことは、その後の妊娠の可能性を放棄することになりかねないと指摘しています。
ただし、イスラエルは体外受精の費用については、回数の制限なしに、全額、国が補償しているため、個人には一切の経済的負担がかかりません。
コメント
何回まで体外受精を続けるべきかは、とても悩ましい問題です。
一般的には、5回以上になると妊娠の可能性が大変低くなるので、5回まで体外受精を受けても妊娠できなかったら、その後の治療方針を再考すべしとされています。
ただ、何回の体外受精で妊娠出来るのかは、もしかしたら、日本では5回以上体外受精を繰り返す方のデータが根本的に少ないので、正確な回数別の妊娠率を算出することは出来ていないだけなのかもしれません。
また、現実的には、繰り返し受けることで妊娠の可能性が残されていても、治療費用の負担という経済的な問題が立ちはだかることになってしまいます。
ですから、日本では、回数が増えても妊娠率がさほど下がらないから、何回でも体外受精を受けましょうということにはなりませんが、今回の研究報告が教えてくれることはいろいろあります。
まずは、数回の体外受精で妊娠に至らなかったからといって、何か致命的な不妊の原因があるとは限らないということ。
2、3回、体外受精を受けても妊娠に至らなかったら、もはや、"最終手段"でも妊娠出来なかったと受け止めてしまうかもしれません。
ところが、それは、単に、巡りあわせの問題で授からなかった可能性が高いと考えてよいわけです。
また、たとえば、原因不明不妊の場合、要するに、排卵があって、どちらかの卵管が通っていて、男性側にも問題がない場合、たとえ、何回か体外受精を受けて、妊娠できなかったとして、経済的、もしくは、その他の理由で体外受精を断念したとしても、その後、人工授精や自然妊娠によって、授かることができる可能性もあるわけです。
今回の研究報告が、不妊原因として、私たちが考えている以上に、原因不明が多い、言いかえれば、単なる、巡り合わせ、つまり、偶然で妊娠できないことが多いと言えるのかもしれません。