オランダの研究チームは、人工授精の際の過排卵刺激による排卵個数と妊娠率、多胎率を調べるために、これまで報告されている14の文献(11,599治療周期)を統合、分析しました。
その結果、人工授精において、過排卵刺激なしで実施した場合の妊娠率は8.4%であったのに対して、過排卵刺激することで複数個の排卵を起こした場合の妊娠率は15%でした。
過排卵刺激の際の排卵個数別妊娠率は、2個で13.4%、3個で16.4%、そして、4個で16.4%でした。
また、多胎率は、過排卵刺激なしで実施した場合は0.3%だったのに対して、過排卵刺激することで複数の排卵を起こした場合の多胎率は2.8%でした。
過排卵刺激の際の排卵個数別の多胎の発生リスクは、2個で6%、3個で14%、4個で10%増加しました。
このことから人工授精時の過排卵刺激は妊娠率を高めるが、3個以上排卵を起こしても、妊娠率がさほど高くならずに、多胎率だけが高まることから、2個までにすべきであると結論づけています。
コメント
不妊治療において排卵誘発剤を使う場合には2通りあります。
無排卵や排卵障害の場合に、排卵を起こしたり、排卵を正常化させたりする目的で使う場合と、正常な排卵がある場合に、妊娠率を高める目的で、複数の排卵を起こすために使う場合です。
後者の使い方を過排卵刺激とよびます。
タイミング法でも、人工授精でも、自然周期で妊娠に至らなかった場合に、妊娠率を高くするために過排卵刺激するのは一般的です。
今回の研究報告は、人工授精の際の過排卵刺激のよる排卵個数別に治療成績を調べたものです。
目的は、あくまで、妊娠率を高くすることですから、3個以上の卵子を排卵させても多胎率のみが高くなるだけであれば、過排卵させる卵子は1個までで、2個までの卵子を排卵させるのがよいとしています。
不妊治療においては、それぞれの治療の目的、そして、ぞれぞれの治療の長所と短所を正確に把握しておくことが大切です。