1074の顕微授精の治療周期における男性の精液検査での精子正常形態率を、Kruger strict criteriaによる分類によって、0%、1%、2%、3%、4%、5~7%、7%以上の7つのグループに分けて、それぞれの治療成績を調べました。
その結果、受精率は74~77%で、正常精子形態率による差はなく、臨床妊娠率も、グループ間での大きな差はなく、49%(正常精子形態率3%)から60%(正常精子形態率0%)でした。
また、胚盤胞まで培養できた割合においてもグループ間での差はなく、41%から50%でした。
そして、移植あたりの生児獲得(出産)率は、44~56%で、グループ間の差は確認できませんでした。
このことから、顕微授精を実施することによって、正常精子形態率は治療成績にそれほどの影響を及ぼさないと結論づけています。
コメント
WHOの精液検査の基準値では、精子正常形態率は15%以上が正常とされています。
その根拠は、正常精子形態率が15%以上 あれば、体外受精による受精率に有意差を認めなかったとの報告に基づいています。
つまり、正常精子形態率が15%を下回ると、体外受精による受精率が低下するということです。
今回の報告では、たとえ、精子正常形態率が基準値を大きく下回っていても、顕微鏡下で、正常な形態の精子を選択し、顕微授精を施せば、受精率や胚盤胞まで分割する割合、そして、妊娠率や出産率は、精液検査による精子正常形態率の影響を受けない事が確かめられたわけです。
奇形精子症に対する顕微授精はとても高い治療効果が期待できるということです。