フィンランドのOulu大学に研究チームは、選択的胚移植の有効性を確かめるために、ある不妊治療クリニックの長期間の治療成績を比較しました。
1995~1999年に、826人の女性が、1359周期の新鮮胚移植、589周期の凍結融解胚移植を受けましたが、ほとんどは2個胚移植で、選択的単一胚移植は4.2%でした。
2000~2004年には、684人にの女性が、1027周期の新鮮胚移植、683周期の凍結融解胚移植を受けていますが、選択的単一胚移植は46.2%に増えました。
それにもかかわらず、採卵あたりの累積妊娠率は、2個胚移植が中心だった期間では33.1%だったのに対して、単一胚移植がふえた期間では38.2%、採卵あたりの累計の出産率は、22.5%から28.0%に向上していることが分かりました。
反対に、多胎妊娠率は、19.6%から8.9%に低下しています。
このことから凍結融解胚を用いた選択的単一胚移植は、より効果的、かつ、より費用のかからない方法であると言えると結論づけています。
コメント
体外受精において、最大のリスクは多胎妊娠であるとされています。
なぜなら、患者側の認識とは裏腹に、多胎妊娠では、母親と子供の健康にさまざまなリスクが大きくなるからです。
そのため、体外受精で多胎妊娠を減らすために、胚移植の際に戻す胚の数をできるだけ少なくすることが試みられ、現在では、原則として1個とされています(選択的単一胚移植)。
ただし、胚の数を1個にすることで、多胎妊娠が少なくなっても、一緒に妊娠率も低くなってしまっては、意味がありません。
今回の報告は、選択的単一胚移植で、かえって、治療成績がよくなったというものです。
このことから、高いレベルの培養レベルを有する施設においては、戻す胚の数を1個にすることは、妊娠率の低下を招くものではないことが分かります。
もちろん、年齢的なことやそれまでの経緯など状況を加味する必要は、もちろん、ありますが、基本的には単一胚移植を採用するべきと研究者は結論付けています。