スペインとノルウェイの大学の研究チームは、310名の女性美容師と同じ人数の事務職の女性を対象に職場環境と生殖器官の健康について、アンケートを実施したところ、1年以内に月経不順で婦人科の治療を受けたことがある人は、女性美容師では9.7%、対象群では3.9%、お子さんを希望してから1年以上授からない人は、女性美容師では5.5%、対象群では2.6%、10年以上の美容師経験のある女性では8.1%に高くなりました。
また、アメリカのイリノイ大学の研究チームは、443名の女性の美容師と508名のその他の職業の女性を調査したところ、女性美容師は他の職業の女性に比べて、早期卵巣不全(POF)にかかるリスクが1.9倍高かったことが分かりました。(Human Reproduction Vol.24 P.2636)
いずれの報告でも、研究者は、さまざまな化学物質の触れる頻度が高い職場環境が、生殖器官の機能を低下させるリスクを大きくするのではないかとの懸念を示していますが、因果関係についてはより精度の高い研究が必要であるとしています。
コメント
女性の美容師の職場環境による影響については、さまざまな報告がなされています。
美容院で使うシャンプーやリンス、ヘアカラーなどに含まれる化学物質の影響について、動物を使った試験では、生殖機能を低下させるとの結果が出ているからです。
ただし、人間への影響については、職場環境には施設や個人の差が大きいことから、これまでの試験でも、必ずしも、マイナスの結果がはっきりと出ているわけではありません。
今回の報告でもその差はそれほど顕著なものではなかったようです。
ですから、これをご覧になっている美容関連の職業の女性の方も、それほど深刻になることはないとは思います。
ただし、さまざまな化学物質の身体への影響は懸念さえるところです。
何らかの方法で影響を避けるような工夫、そして、体の代謝や排泄機能を高めることで、有害な物質の影響に強くなることが大切なことかもしれません。