職場でのビスフェノールA暴露量と男性の性機能低下の関係

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2009年11月13日

Human Reproduction

ポリカーボネートやエポキシ樹脂などのプラスティックの原料に使われている化学物質で、環境ホルモンとして健康への悪影響が懸念されることのある、「ビスフェノールA]の男性の性機能への影響について調査を実施したところ、職場でビスフェノールAに暴露する可能性のある男性は、そうでない男性に比べて、ED(勃起不全)などの性機能の低下のリスクが高いことが、アメリカと中国の研究グループによって確かめられました。

アメリカと中国の研究グループは、アメリカ国立労働安全衛生研究所の資金で、5年間に渡って、上海の化学工場で働く634人の男性を対象にした試験を実施しました。

高いレベルでビスフェノールAの暴露の可能性のある男性230人と、その可能性のない男性404人の性機能について調査したところ、ビスフェノールAに暴露する可能性のある職場で働く男性は、そうでない男性に比べて、

・ED(勃起不全)になるリスクが4倍以上高く、
・性欲が低下するリスクもほぼ4倍高く、
・ビスフェノールAに暴露する量が多い男性ほど性機能の低下のリスクも高いことが、
明らかになりました。

このことから、職場におけるビスフェノールAの暴露は、男性の性機能を低下させる可能性があるとしています。

コメント

ビスフェノールAは、主にポリカーボネート、エポキシ樹脂と呼ばれる、プラスティックの原料として使用される化学物質で、環境ホルモンとしてさまざまな健康への悪影響を指摘する専門家がいます。

上記のプラスティックは、電気機器やOA機器、一部、食器や容器などに使用されていることから、食品用の容器から溶出したビスフェノールAの影響を避けるため、最近では溶出しないような工夫が施されているようです。

今回の報告は、職場でビスフェノールAに暴露することのリスクを初めて調査した試験で、この化学物質が男性の性機能を低下させる可能性を指摘しています。

生殖ホルモンを混乱させ、生殖機能へのマイナスの影響を懸念される環境ホルモンについては、近年の男性の精子数の減少の原因の一つではないかとの考え方にあるようですが、専門家の間でも意見が真っ二つにわれています。

職場でビスフェノールAに触れる機会のある男性は注意が必要かもしれませんが、普通に生活している限りにおいては、何らかの対策を講じなければならないわけではありません。

ビスフェノールAが、生殖機能に、本当にマイナスの影響を及ぼすのかどうか、また、及ぼすとすればどの程度の量で、どのくらいの影響があるのかについては、今後の研究を待つしかないようです。

いずれにしても、私たちにとっては、何かを制限するというよりも、体内に入る有害な物質の影響を受けないために、運動で汗をかく習慣を身につけること、そして、食物繊維などを豊富に摂って、自らの自浄能力を高めることが大切なことのように思います。

わざわざ、デトックスするまでもないことです。