年齢が38歳以下の121名の女性を対象に、体外受精の際に得られた胚の透明帯の厚さが13マイクロミリメートル以上だった場合、透明帯の厚さに差が出ないように、ランダムにアシスティッドハッチングを施した場合と施さなかった場合にわけて、治療成績を比較しました。
その結果、臨床妊娠率は、アシスティッドハッチングした場合は47%、しなかった場合は50%、また、出産率は、それぞれ、46%、45%でした。
さらに、流産率においては顕著な差は見られませんでした。
このことから、母親になる女性の年齢が38歳以下であれば、たとえ胚の透明帯が厚い場合でも、アシスティッドハッチングの治療効果は期待できないと結論づけています。
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子宮内膜にたどり着いた胚は、胚の表面を覆う透明帯が溶けることによって、胚が外に出て着床しますが、このことを孵化(ハッチング)と呼んでいます。
ところが、このハッチングがうまくいかないことで、着床できないことがあり、着床障害の原因の一つとされています。
ハッチングがうまくいかない原因には、高齢によるもの、もともと透明帯が厚く、固いというケースもあれば、また、体外で培養したり、凍結融解したりといった生殖医療による場合もあるようです。
このようなケースでは、透明帯を薬剤で溶かしたり、外科的に切れ込みを入れることで、孵化しやすくする治療のことをアシスティッドハッチングと言います。
ところが、アシスティッドハッチングの治療効果については、明確なエビデンスがあるわけではありません。
これは、体外受精の際に着床しない原因が、孵化しにくいことによる着床障害であるかどうかを見極めることが困難であることからでしょう。
今回の報告でも、年齢的に38歳以下であれば、アシスティッドハッチングの治療効果が確かめられなかったとしており、そのため、年齢が38歳以上で、2~3回、移植が成功しない場合のみ実施するべきとしています。