ロンドンのInstitute of Child Healthの小児科医グループは、顕微授精によって出生した195人の子どもと自然妊娠によって出生した211人の子どもを対象に、6歳時点の健康状態を調べたところ、身長はほぼ同じであったにもかかわらず、顕微授精で生れた男児の指の薬指が自然妊娠で生れた男児のそれよりも短いことが分かりました。
これまでの研究で、薬指が人差し指に比べて長い男性ほど、生殖能力が高いことが分かっていることから、顕微授精で生れた男児は父親の男性不妊が遺伝しているおそれがあると指摘しています。
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この試験で明らかになったのは、顕微授精で生れた男児の薬指は比較的短いということであって、男性不妊の治療のために顕微授精を行うことで、必ず、男性不妊が遺伝することが確かめられたわけではありません。
ただし、顕微授精では体外受精と違い、受精に必要なのは1個の精子であり、射精液中の精子だけでなく、精巣内精子でも妊娠が期待できるようになりました。
つまり、精巣内から精子を採取し、凍結し、そして、顕微授精するという高度な技術の助けなしには、到底、妊娠は望めなかったわけです。
ところが、それらの技術によって妊娠が可能になったことから、男性不妊、つまり、精液中に精子が存在しない原因となっている遺伝的な傾向が、子どもに引き継がれる可能性を生み出したことは間違いありません。
実際に、先天的に精管が欠損していたり、精子をつくる機能の障害などを引き起こす可能性のある遺伝子が、顕微授精によって、次の世代に引き継がれているわけです。
このことから、今回の試験を実施した医師も指摘しているように、顕微授精の実施には、より慎重になるべきで、どうしても顕微授精でしか妊娠が望めないことが明らかな場合しか、実施すべきではないと警鐘を鳴らしています。
たとえ、男性不妊と診断されても、安易に高度な治療の進むのではなく、泌尿器科医による治療で、妊娠させる力を回復させたり、高めたりして、出来るだけ自然に近い方法で妊娠を目指すことがとても大切です。