アメリカで初めて体外受精児が生まれたEastern Virginia Medical Schoolで、1981年から1990年に体外受精で生れた子ども173人(18~26歳)を対象に追跡調査を実施したところ、体外受精で生れた子どもは成人期に入っても、心身の件子状態は、自然妊娠で生れた子どもく比べて、大きな差はなく、概ね、健康で、社会生活に適応しているとのことです。
ただ、ADHD(注意欠陥、多動性障害)については、アメリカの平均の発症率は3~5%であるのに対して、体外受精児では27%と高かったり、それまでうつと診断された割合も一般では13%であるのに対して、16%とやや高かったとのこと。
一方、慢性病にかかる割合は体外受精児のほうが一般の平均よりも低く、タバコを吸う割合は一般では39%なのに対して、体外受精児は14%と低く、運動習慣のある割合は、一般では61%なのに対して、体外受精児は92%と高かったとのこと。
さらに、よくお酒を飲むのは体外受精児の女性で55%と一般の若い女性の平均36%よりも高かったとのこと。
研究チームは、体外受精における初期の胚の操作の長期的なマイナスの影響はみられないとし、生活習慣などの特徴は、体外受精を受けて子どもを授かった親や一般の親に比べて、過保護気味になる傾向があるからではないかとしています。
コメント
体外受精の子どもへの影響について、生まれてすぐの時点でのリスクは相当把握されるようになりました。
ところが、生まれてから成長するに伴って、何らかの影響が出てくるものなのかについては、体外受精出生児を追跡調査するしかありません。
今回の報告は、成人期の時点ですから、これまでの調査の中では最も高い年齢に達しているという点で大変価値のある内容です。
そして、概ね、健康でうまくやっているとのこと。
安心できる内容です。
イギリスで初めて体外受精が成功したのが今から31年前ですから、今後、成人期を迎える体外受精で生れた子どもが急増してくるはずです。
これまでのところ、どんな方法で妊娠したかというよりも、妊娠前や妊娠中の両親の健康状態や出生後の環境のほうが、子どもへの影響が大きいと言えるかと思います。