精子のDNAの損傷は体外受精や顕微授精の治療成績を悪化させる

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2010年05月11日

Human Reproduction

精子にDNAの損傷があると体外受精の妊娠率を低下することが、イギリスで実施された試験で明らかになりました。

クイーンズ大学の研究チームは、精子のDNAの損傷と高度生殖補助医療の治療成績との関係を調べるために、体外受精を受けている230組のカップルと顕微授精を受けている130組のカップルを対象に、試験を実施しました。

その結果、体外受精で妊娠に至らなかったカップルの男性は、妊娠に至ったカップルの男性に比べて、精子や遠心分離処理した精液のDNA断片化率が、それぞれ、12.2%、9.9%高かったことがわかりました。

また、顕微授精を受けたカップルでは、DNA断片化率では違いは確認できなかったものの、酸化ストレスによる生成物を含めると、妊娠に至らなかったカップルの男性は妊娠に至ったカップルの男性に比べて、精子のDNA損傷は16.8%、精液中のそれでは15.5%、それぞれ高いことが分かりました。

このことから、精子のDNAの損傷は、男性の妊娠させる力を測る目安になると結論づけています。

コメント

通常、男性の妊娠させる力は、精液検査の結果による精子濃度や運動率によって測られています。ところが、それに加えて、精子のDNAの損傷率も重要な目安になると言えます。

もしも、精液検査の結果が正常値であったとしても、精子のDNA損傷率が高ければ、妊娠しづらくなる可能性が大きいというわけです。

精子のDNAを損傷から守るには、タバコを吸わないことや過激な運動はしない、ストレスをマネージメントする、野菜や果物を豊富にとる、抗酸化物質をサプリメントで摂取することなどが有効です。

不妊治療を受けているカップルの男性は、たとえ、精液検査に問題がなくても、酸化ストレスを低くすることは大切なことです。