原因不明の習慣流産には低用量アスピリンやへパリン併用療法は意味がない

その他

2010年06月01日

the New England Journal of Medicine

原因不明の習慣流産には、低用量アスピリンも、低用量アスピリンとヘパリンを併用しても、プラセボ(偽薬)を摂取した場合と比べて出産率に違いはみられないことが、オランダで実施された試験で明らかになりました。

オランダのアムステルダム大学の研究チームは、18~42歳の原因不明の習慣流産の女性364人を、ランダムに低用量アスピリンとへパリンを併用して投与するグループ、低用量アスピリンのみを投与するグループ、そして、プラセボ(偽薬)を投与するグループに分けて、試験期間中に妊娠した299人の出産に至る割合を調べました。

その結果、それぞれのグループの出産率は、併用療法のグループでは54.5%、低用量アスピリンのみのグループでは50.8%、そして、プラセボ(偽薬)のグループでは57%と、大きな差がみられませんでした。

このことから、原因不明の習慣流産の女性には、低用量アスピリンやへパリン併用療法による出産率の改善効果はないことが分かりました。

コメント

流産を2回繰り返すことを反復流産、3回繰り返すと習慣流産とよばれます。

流産の確率は約15%とされていますが、反復流産は約4%、習慣流産は約1%と言われています。

これが、原因不明、すなわち、運悪く、たまたま流産を繰り返してしまう確率でなわけです。

原因が分からない、あるいは、みつけることができないわけですから、治療の仕様がないのですが、反復流産した女性が何の治療も受けなくても3回目の妊娠で80%以上は出産に至り、習慣流産した女性が4回目の妊娠で50%以上の確率で出産すると言われているのです。

すべて原因が分からないケースです。

もしも、不育症の検査で流産を繰り返す原因が分かれば、それに対して適切な治療を施せば、出産率はもっと高くなるはずです。

さて、原因不明で流産を繰り返す場合、血流をよくする目的で、低用量アスピリンやへパリンを加えた併用療法を施されることがあります。

それらの治療法は抗リン脂質抗体など、血液が固まりやすくなる病気が原因で流産を繰り返すケースでは、有効な治療法とされていますが、原因不明のケースでは意味がないようです。

悲しいかな、悪いところがないにもかかわらず、たまたま、流産を繰り返すことはありえることで、検査を受けても悪いところがなければ、何の治療も受けなくても、次の妊娠で想像している以上に高い確率で出産できるわけです。

大切なのは、繰り返し流産してしまったことを、どのように受け入れるのかということなのかもしれません。