イギリスのアバディーン大学の研究者らは、これまで実施された臨床試験から1367名の女性を対象に、2日目、もしくは、3日目の単一胚移植(683名)と2個胚移植(683名)の治療成績を比較しました。
それぞれの治療成績は以下の通りでした。
◎トータルの出産率
・単一胚移植 27%
・2個胚移植 42%
◎多胎妊娠率
・単一胚移植 2%
・2個胚移植 29%
◎単一胚移植による新鮮胚移植+凍結融解胚移植の累計妊娠率と1回の2個胚移植の出産率
・単一胚移植×2周期の累計出産率 38%
・1回の2個胚移植の出産率 42%
◎上記の多胎率
・単一胚移植×2周期の累計多胎率 1%
・1回の2個胚移植の多胎率 32%
この結果、妊娠期間が37週以上の健康な単胎児を出産する確率は、選択的単一胚移植は2個胚移植のほぼ5倍になることが分かりました。
コメント
体外受精や顕微授精の最大の副作用である多胎妊娠を予防するため、子宮に戻す(移植)する胚の数を1個にするのが単一胚移植です。
今回の報告は単一胚移植と2個胚移植の治療成績を比較したメタアナリシスです。
メタアナリシスとは、過去の実施された複数の臨床試験で得られたデータを収集、統合して、統計学的手法によって解析し、より精度の高い結果を導き出そうとする方法です。
その結果、2個の胚を移植したほうが出産に至る確率は高いものの、単一胚移植でも余剰胚を凍結して、新鮮胚移植に続いて、凍結融解胚移植するという、単一の胚移植を2回繰り返した累積の出産率は、1度に2個の胚を移植するのに匹敵することが確かめたというわけです。
つまり、同じ2個の胚を移植するのでも、1個ずつを2回に分けて移植したほうが1回で2個移植するのと比べて出産率はほぼ同じレベルで、ほとんどの多胎妊娠を防げるのです。
ただし、女性の年齢が38歳以上の場合は勧められないとしています。