クロミフェンが無効なPCOSへの手術療法とホルモン療法の長期成績比較

不妊原因になる病気

2011年05月30日

Human Reproduction

クロミフェン(飲み薬の排卵誘発剤)の効き目が思わしくない多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に対して、最初に手術(腹腔鏡下卵巣焼灼術)をした場合とより強力な排卵誘発剤(ゴナドトロピン療法)を使った場合、8~12年後の結果を比較したところ、出産に至った確率には大きな差はみられませんでした。

ただし、二人目のお子さんを出産する確率は最初に手術を受けたほうが高く、また、最初に手術を受けたほうが、その後のホルモン療法や体外受精が必要になる割合や多胎妊娠率が低いことが分かりました。

オランダの研究グループは、1988年2月から2001年10月の間に、クロミフェンが効かなかったPCOS患者の女性168名を、最初に手術(腹腔鏡下卵巣焼灼術)を受けるグループとより強い排卵誘発剤(ゴナドトロピン療法)を使うグループにランダムに分けて、8~12年後に結果を比較しました。

その結果、最初に手術を受けた女性の86%、すぐにゴナドトロピン療法(rFSH)を受けた女性の81%が子どもを出産していました。

二人目の子ども出産していたのは、手術療法では61%、ゴナドトロピン療法では46%と、手術療法のほうが二人目の子どもを出産した女性の割合が高かったとのこと。

多胎妊娠率は、手術療法では5%だったのに対して、ゴナドトロピン療法では10%でした。

また、排卵障害が改善され、規則正しい月経サイクルがある女性は手術療法では54%、ゴナドトロピン療法では36%でした。

この結果から、PCOSの女性でクロミフェンでも排卵が起こらない場合の手術療法は安全な治療で、長期的な効果が認められると結論づけています。

コメント

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、無月経や排卵障害を招くことが多いことから、不妊の原因になりえる病気です。

最近、PCOSと診断される女性が増えているとのこと。

PCOSによる排卵障害の治療は、まずは、比較的作用のマイルドな飲み薬の排卵誘発剤であるクロミフェンを服用することになります。

今回の研究は、飲み薬の排卵誘発剤であるクロミフェンでも排卵が起こらない場合、手術を受けた場合とより強い排卵誘発作用のある注射薬を使った場合の長期間の結果を比較したものです。

治療方針を検討する際の参考になると思います。