アメリカのハーバード大学の医療関連施設であるマサチューセッツ総合病院の研究チームは、カロリー制限が高齢の雌のマウスの卵子にどのような影響を及ぼすのかを調べるために、生殖力の最も高い年齢にある若い雌マウスと生殖年齢後期の高齢の雌マウスを2つのグループに分けて、一方には、好きなだけエサを与え、もう一方には、総摂取カロリーを通常の70%に制限したエサを与えました。
その結果、好きなだけエサを与えた高齢雌マウスの排卵された卵子の数や受精率は年齢相応に低下したものの、カロリー制限された高齢の雌マウスでは、加齢のよる影響がみられず、若い雌マウのそれと同等であることが分かりました。
この結果から、カロリー制限は雌の高齢マウスの加齢による染色体異常などの卵質の低下を防ぐことがわかったとしています。
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現在、抗加齢医学では、カロリー制限が健康寿命を延ばすとして大変注目されています。
低栄養のないカロリー制限(Caloric restriction:CR)は、老化のスピードを遅らせ、寿命を延長させることを、霊長類ではじめて示されたのは、有名な2009年のサイエンス誌に掲載されたアメリカのウィスコンシン国立霊長類研究所のアカゲザルを使った30年に及ぶカロリー制限の実証実験の経過報告によってです。
カロリー制限は、長寿遺伝子「サーチュイン」を活性化させ、インスリンの感受性を高め、DHEAの加齢に伴う分泌低下度を減少させることもサルで確かめられていました。
今回の報告では、高齢マウスにカロリー制限を施行すると、その卵細胞の質はは若いマウスのそれに匹敵したというものです。
このことが、そのまま人間に当てはまるとは言えませんが、カロリー制限とは、メタボリックシンドロームとは全く逆の現象が起こるわけですから、糖の代謝異常やホルモン異常の改善が卵の若返りに寄与することは十分に考えられるところです。
ただし、カロリー制限は単なるダイエットではなく、あくまでもたんぱく質や脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの栄養バランスを保ちながら、総摂取カロリーだけを通常の70%程度に減らすというものです。