研究は、2000~2003年の6つの州(アラバマ州、イリノイ州、メイン州、メリーランド州、ネブラスカ州、オクラホマ州)のPRAMS(妊娠のリスクの評価モニタリングシステム)のデータを使って実施されました。
不妊治療を受けて子どもを妊娠、出産した母親は1824名で全体の10.9%で、その内訳は、体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療で子どもを出産したのは920名、排卵誘発剤を使って子どもを出産したのは904名、そして、いかなる不妊治療を受けずに子どもを出産した母親は14673名でした。
3つのグループの出産前後の子どもの健康状態を比較しました。
その結果、単胎児では、高度生殖補助医療で出生した子どもは自然妊娠で出生した子どもよりも低出生体重児(1,500g未満の割合:4.9%対1.1%)や早産(37週未満の割合:30.1%対8.6%)、胎内発育遅延(胎内発育遅延の割合:14.5%対6.7%)になりやすく、排卵誘発剤で出生した子どもは自然妊娠で出生した子どもよりも胎内発育遅延(11.1%対6.7%)になりやすいことがわかりました。
ただし、双子では、差は見られませんでした。
コメント
高度生殖補助医療や排卵誘発剤を使用するによる、避けるべき最大の副作用は多胎妊娠で、多胎妊娠は母親と子どものさまざまな健康リスクを高めてしまうからです。
最近では、単一胚移植が普及したことによって高度生殖補助医療の多胎妊娠は激減しました。
低出生体重児とは、出生時の体重が2,500g未満の新生児のこと(この研究では,500g未満)、早産とは36週未満で出産すること、そして、胎内発育遅延は母親のお腹の中にいた期間に応じた胎児の発育が認められず、発育が遅延していると考えられる状態のことです。
くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、もちろん、避けるには越したことはありませんが、いずれも小さく生まれただけで、何の異常もなく、元気に育っているお子さんがほとんどであることです。
また、それぞれの原因としては、必ずしも、体外受精や顕微授精という生殖技術や排卵誘発剤の使用そのものではなく、不妊症の原因や背景に由来するものである可能性が高いと考えられています。
大切なことは、妊娠、出産に臨むにあたって、健康な心身の状態を目指すことで、妊娠や出産に伴うリスクを低くすることです。