アメリカのノースウエスタン大学の研究者らは、卵の成熟に伴い卵細胞内に亜鉛が蓄積され、亜鉛濃度が上昇し、受精後に亜鉛を放出することを確かめました。
研究者は、亜鉛はスイッチのような働きをしていて、卵が成熟すると卵の分割を停止し、そして、受精後に、再び、分割を開始させると説明しています。
研究チームはマウスやサルの卵を使い、それぞれの細胞内の亜鉛の濃度や分布を把握するために、亜鉛があると発光する化学物質を顕微鏡で観察するという方法を考案し、受精後の亜鉛放出を観察することに成功しました。
受精後20分にはじめての亜鉛放出を確認し、その後2時間に渡り、平均10分毎に放出されました。
これまでの研究で、受精が引き金になって、卵細胞内のカルシウム濃度が周期的に変化することが知られていましたが、亜鉛の放出は細胞内でカルシウム濃度が最も高くなった後に発生することを確かめました。
亜鉛放出の回数やタイミング、強さが受精卵の質に関わっており、今後の重要な研究分野になるであろうこと、また、生殖活動において女性が食事から摂取する亜鉛の量がどのように影響するのかを調べる必要があるとしています。
コメント
これまでの研究で、亜鉛は受精卵の成育に不可欠な働きを担うことは知られていましたが、この動物実験で、より具体的な役割について明らかにされたようです。
精子と卵子が融合し、受精が成立するとき、そして、細胞分裂がはじまるときには、細胞内のカルシウムの濃度変化が同時に起こっていることが知られていました。カルシウム振動と呼ばれている現象です。
細胞内のカルシウム濃度が一瞬にして変化するのですが、生命活動の根幹をつかさどる働きとして注目されていますが、今回の実験ではカルシウム濃度がピークに達した後、亜鉛が細胞内から細胞外に放出されることを確認しました。
そして、亜鉛放出は卵の成熟に伴う減数分裂を停止させたり、受精卵の分割、成育を起こしたりするスイッチのような役割を担っていると言います。
カルシウムや亜鉛などのミネラルが、生命活動をつかさどっていることの一端が明らかになったわけで、大変興味深く、かつ、感動的でさえあります。