スタンフォード大学の研究者らは、全米先天異常予防研究(National Birth Defects Prevention Study)から、 神経管閉鎖障害の子どもの母親936人、口唇口蓋裂の子どもの母親2,475人、そして、比較対照群として健康な子どもの母親2,475人を対象に、妊娠前後の食生活についてアンケートを実施しました。
アンケートの結果を食物摂取頻度データを使って、地中海式食事スコアと食事の質指数(Diet Quality Index)のスコアを算出し、4つのグループに分けました。
そして、子の先天異常の発症に影響する要因を排除した結果、地中海式食事スコアや食事の質指数が高い女性の子どもほど、神経管閉鎖障害や口唇口蓋裂の発症が少ないことがわかりました。
その中でも、無脳症と食事の質指数との相関関係が最も強く、食事の質指数が最も高いグループでは最も低いグループに比べて、無脳症の子の発症リスクが51%低いことがわかりました。
また、口唇口蓋裂では、食事の質指数が最も高いグループでは最も低いグループに比べて、口蓋裂が伴わない口唇裂の子の発症リスクが34%低く、口蓋裂を伴い口唇裂の発症リスクは26低いことがわかりました。
コメント
これまで、葉酸が不足すると神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなることから、妊娠前の女性は葉酸のサプリメントを摂るように推奨されています。
このことは、世界的なコンセンサスが形成されています。
ところが、今回の研究では妊娠の前年の母親の食事の質が高いほど、神経管閉鎖障害や口唇口蓋裂の子の発症リスクが低く、そのことは母親の葉酸のサプリメントがリスクを低減する影響を排除した後も変わらなかったと言います。
このことは、これまで神経管閉鎖障害のリスクは葉酸という単一の栄養素だけで語られてきましたが、決して、それだけで神経管閉鎖障害を完全に予防することは出来ないこと、そして、食事全体の質、すなわち、5大栄養素をバランスよく摂ることが子の先天異常の予防のためには基本になることを教えてくれています。
結局、妊娠前、妊娠後の母親の体内の栄養状態が妊娠する力や子どもの健全な発育に強く影響を及ぼすということに他ならないとうことでしょう。