ロンドン大学(University College London)の大学病院で排卵誘発剤を使った不妊治療を受けている女性の患者58名をランダムに2つのグループに分け、一方のグループにはマルチビタミンミネラルのサプリメントを、もう一方には葉酸サプリメントを摂取してもらい、3周期の治療終了時点の治療成績を比較しました。
その結果、マルチビタミンミネラルを摂取したグループでは29組中20組が妊娠、葉酸サプリメントを摂取したグループでは27組中11組が妊娠しました。
それぞれのグループの妊娠率はマルチビタミンミネラルのサプリメントを摂取したグループでは69.0%、葉酸のサプリメントでは40.7%でした。
また、継続妊娠率は、マルチビタミンミネラル組と葉酸組は、それぞれ、60.0%、25.0%でした。
さらに、マルチビタミンミネラル服用グループのほうが葉酸服用グループに比べて、少ない治療周期で妊娠に至ることができたといいます。
この結果から、排卵誘発剤を使った治療周期では葉酸サプリメントよりもマルチビタミンミネラルのサプリメントを摂取したほうが高い妊娠率が得られ、マルチビタミンミネラルは不妊治療の補助になり得る可能性があると結論づけています。
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これまでサプリメントに関して、その有用性が質の高い試験によって確かめられていたのは、葉酸の脊椎二分症の予防効果だけでした。
また、妊娠前や妊娠中のビタミンミネラルの不足が、胎児の発育の障害になることも確かめられていました。
ところが、今回の試験は、排卵障害や原因不明の不妊症の女性患者がクロミフェンやhmg注射などの排卵誘発剤を使った不妊治療を受ける際に、マルチビタミンミネラルのサプリメントを服用することで、治療成績がよくなることが確かめられています。
不妊によいとか、妊娠によいなどという、意味のあいまいな宣伝文句で多くのサプリメントや健康食品が出回っていますが、そもそも、その有用性について、確かな科学的証拠に基づくものはほとんどありません。
栄養成分は、必要性という観点から大きく、2種類に分けることができます。
一つは、「全ての人に必要な」基本的な栄養素。3大栄養素と呼ばれる、糖質、たんぱく質、脂質、そして、2大栄養素と呼ばれる、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素です。
もう一つは、「一部の人には有効な」特殊な機能性を持つ成分です。よく、巷で話題になったり、一時的に流行したりする、さまざまな成分です。
5大栄養素とは、どれ一つとしてなければ人間が生き ていくことが出来ない約50種類の栄養素です。
当然、生殖機能を支える基礎となる栄養素であり、過 不足が生じると、代謝障害となり、卵や受精卵の健全 なの成育が妨げられてしまうリスクが高まります。
一方、さまざまな機能性食品は、たとえ、なくても生 命活動や生殖機能には何の支障も生じません。
まずは、基本的な栄養素のバランスを整えることを優 先すべきであることは言うまでもありません。
そのためになすべきは、まずは、毎日の3回の食事をバランスよく食べることです。
ところが、現代に特有の食生活では、たとえ、気を使っていても、摂り切れない栄養素があることも明らかです。
そのため、マルチビタミンミネラルで補充するのが正しい順番です。
今回の研究報告はこのことを裏付ける内容と言えるのではないでしょうか。
また、妊娠前、妊娠中に摂るサプリメントは、安全に留意した品質であることも大切な要素です。