不妊治療(排卵誘発・人工授精・体外受精)によって異常妊娠や異常分娩が増えるのか?

不妊治療のリスク

2012年08月08日

Fertility and Sterility

排卵誘発剤の使用や人工授精、体外受精を受けて妊娠、出産した場合、前置胎盤や早産、低出生体重児などの異常妊娠や異常分娩のリスクが高くなるものの、それは、不妊治療によるものというよりも、不妊治療を受けなければならなかった要因によるものと考えられることが、日本医科大学や東京女子医大学の研究チームによる日本産科婦人科学会の登録データの分析の結果、明らかになりました。

研究チームは2001年から2005年に日本産婦人科学会に登録された24万2715人の単胎妊娠した妊婦のデータを使って、不妊治療を受けて妊娠した妊婦(排卵誘発剤:4111名、人工授精:2351名、体外受精:4570人)と自然妊娠した妊婦の妊娠や出産にかかわるリスクを比較しました。

その結果、不妊治療を受けて妊娠した妊婦は、自然妊娠で妊娠した妊婦に比べて、前置胎盤や早産、低出生体重児などのリスクが高く、頭位自然分娩の割合が低いことがわかりました。

前置胎盤のリスクは、排卵誘発剤使用で1.7倍、人工授精で1.5倍、体外受精で2.1倍、34週未満の早産では、排卵誘発剤使用で1.3倍、人工授精で1.2倍、体外受精で1.3倍、1000g未満の低出生体重児では、排卵誘発剤使用で1.7倍、人工授精で1.3倍、体外受精で1.4倍高くなりました。

ただし、不妊治療の方法によるリスクには有意な差は見られないことから、異常妊娠や異常分娩のリスクが高くなるのは、不妊治療を受けたこと、そのものによるものではなく、不妊治療を必要とした要因によるものと考えられるとしています。


不妊治療の副作用の一つとして、異常妊娠や異常分娩などの合併症が増えるような印象がもたれていますが、不妊治療、そのものによるものではなく、母親の健康状態が原因になっている可能性が高いことが今回の研究で明らかになりました。

コメント

不妊治療で、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、たくさんの卵胞を育てたり、体外受精を受けた場合、その副作用で、妊娠や出産に伴ういろいろなリスクが高くなりはしないか、心配する方は少なくないと思います。

実際に、日本産婦人科のデータでは不妊治療を受けて妊娠、出産した場合、前置胎盤や早産、低出生体重児のリスクが増加していることがわかります。

ところが、不妊治療法別のリスクのレベルのはそれほどの差がみられません。

つまり、異常妊娠や異常出産のリスクが高くなるのは、不妊治療を受けたこと、そのものによるものというよりも、不妊治療を受ける必要があった健康上の要因によるものと考えられるというわけです。

現代に特有な生活習慣が不妊症の原因のほとんどを占めると考える専門家もいます。

妊娠を希望し、不妊治療を受けている女性は、当たり前な生活習慣を心がけ、健康度を高めることが、妊娠しやすくし、治療効果を高めるだけでなく、妊娠後のさまざまなリスクの低減につながることを知って欲しいと思います。