試験は、2009年から2010年にかけて実施された18から22才の健康な男性のライフスタイルと精液検査の結果との関係を調べた「ロチェスターヤングメンズスタディー」の参加者を対象に、過去3か月間の日常の運動レベルやテレビを見る時間と精子濃度や総精子数、運動率、形態率との関係を調べました。
その結果、よく運動する男性ほど精子濃度や総精子数が高いことがわかりました。
過去3か月間の一週間の運動(*)時間で4段階(~4.5時間、5~8時間、8.5~14時間、15~50時間)のグループに分けたところ、最も長く運動していたグループの男性は最も短かったグループの男性に比べて、精子濃度が73%高かったとのこと。
また、テレビを見る時間が長い男性ほど精子濃度や総精子数が少ないこともわかりました。
一週間のテレビを見た時間で4段階(~4.5時間、5~8時間、8.5~14時間、15~50時間)のグループに分けたところ、テレビを見た時間が最も長かったグループの男性は、全くテレビを見なかった男性に比べて44%精子濃度が低かったとのこと。
*運動強度は3METs(メッツ)以上の強度のある身体活動・運動としています。メッツとは、身体活動の強度を表す単位(運動によるエネルギー消費量が安静時の何倍にあたるかを示す)のことで、具体的な目安としては、通常歩行が3メッツです。
コメント
運動と精子の質との関係については、これまで多くの文献がありますが、相反する結果になっています。今回の結果のように、運動するほど精液中の精子の状態がよくなるというもののあれば、運動するほど精子の質が低下するというものもあり、関連性が診られなかったと言うものもあります。
そのような結果になる原因は、運動の強度や時間の測定方法がバラバラだったからではないかと今回の論文の筆者は指摘しています。
そして、これまでの研究や今回の研究の結果から、激しい運動、たとえば、トライアスロンや自転車レースなどは酸化ストレスを高め、精子のDNA損傷率を高めてしまうかもしれない。
一方、運動強度でメッツ3(ウォーキング)以上の運動をよくする男性ほど精子数や精子濃度が高いことから、過度に激しくない運動は勧められるとしています。
反対に、テレビを見る時間が長い男性ほど精子数や精子が低かったことから、運動不足はよくないとしています。
厚生労働省は生活習慣病の予防のために、3METs(メッツ)以上の強度のある身体活動・運動を1日60分、1週間に23EX(エクササイズ)以上行うことを推奨しています。因みに、3METsの運動が1時間で3エクササイズですので、毎日1時間で、週末にプラスαといった感じでしょうか。
以前は、世界的に強い運動を行わないと効果が期待できないという風潮でしたが、現在は自覚症状として「楽である」~「ややきつい」ぐらいの軽い有酸素運動が勧められているそうです。
とにかく、お子さんを望まれる男性、精液検査の数値が思わしくなかった男性は、生活習慣を見直すことが大切なようです。
自身の健康、イコール、精子の健康、ひいては、お子さんの健康と言えます。