初めての体外受精に臨む男性94名と同じ年齢相の比較対照グループ85名を対象に、何らかの原因で現在抱えている心配(状態不安:state anxiety)の強さや性格的に不安を感じやすい(特性不安:trait anxiety)度合いと精子の質との関係を調べるために、状態不安・特性不安検査と精液検査の結果を分析しました。
その結果、いずれのグループの男性も、状態不安や特性不安が大きいほど、精液量や精子濃度、総精子数、精子運動率が低く、精子DNA損傷率が高いことが明らかになりました。このような関連性は初めての体外受精を受ける男性グループによりはっきりしていました。
このことから、不安な状況のあること、そして、性格的に不安を感じやすいことは、男性の妊娠させる力を低下させる可能性があると結論づけています。
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ストレスが男性の精子の質を悪化させることは、これまでもいくつもの研究報告がなされていますが、この報告では、state anxiety(状態不安)とtrait anxiety(特性不安)にわけて、ぞれぞれの関連を、初めての体外受精に臨む男性と一般の男性を対象に調べているところが新しいところです。
状態不安というのは、何らかの原因がある、一過性の不安のことで、それに対して、特性不安というのは、何も原因がなくても、常に感じている不安、すなわち、気質的な不安のことです。
それぞれの不安の強さが精子の状態にどのように影響するのかを、初めての体外受精に臨む男性と一般の男性で調べたというものです。
その結果が、どちらの種類の不安も、大きくなるほど、精子にはよくないようで、それは、初めての体外受精に臨む男性にとっても、一般の男性にとっても同じだったようですが、やはり、体外受精の臨む男性のほうがより明確な関連性がみられたようです。
よく男性は女性よりも、繊細な神経をもっているところがあると言われますが、特に、男性不妊と診断されることによる精神的なダメージは相当なものと想像されます。
メンタルな状態が"妊娠させる力"に、ダイレクトに影響を及ぼすわけですから、周囲のケアや正しい情報に接して、出来るだけ不安を和らげることが、とても大切なことではないでしょうか。