2008年1月から2011年6月の間にデンマークの徴兵検査を受けた953名の男性を対象に、過去4週間の睡眠パターンから睡眠の質を測定するアンケート形式の調査(the Karolinska Sleep Questionnare)を受けてもらい、精液検査の結果との関連性を調べました。
アンケートは4つの質問「よく眠れたか、眠りにつくのが難しいか、目覚めが早すぎて、その後、眠れなくなるか、夜中に何度も目が覚めて、再び、眠りにつくのが難しいか」から構成され、それぞれの質問に対して、「いつも」・「ほとんどいつも」・「たまに」・「ない」の4段階で回答するものです。そして、「いつも」には100、「ほとんどいつも」には67・「たまに」には33・「ない」には0のスコアが付与され、スコアの平均が「睡眠スコア」になります。
そして、睡眠スコアで7段階(0、1-10、11-20、21-30、31-40、41-50、51以上)のグループに分けました。
その結果、睡眠スコアと精子濃度や精子数、運動率、正常精子形態率、精巣サイズは、スコアが11-20(正常精子形態率は21-30)が最高になる逆U字型の相関を示し、睡眠スコアが低くても、高くても、精子の質の低下に関連しました。
睡眠障害スコアが最も高かった(51以上)男性は、11-20だった男性に比べて、精子濃度で29%、正常精子形態率で1.6ポイント、それぞれ低かったことがわかりました。
この結果から、よく眠れないことは精子の質の低下に関連していましたが、反対に、よく眠れ過ぎても精子の質の低下と関連していました。
コメント
睡眠の質と精液の質の関係を調べた報告は、おそらく初めてのようです。
興味深いのは、睡眠の質が低いと、精子の数や正常な形態の精子が少ないというのは理解できますが、反対に、睡眠の質が高すぎても、低くなることです。
また、睡眠障害スコアと生殖関連のホルモン分泌には関連は見られなかったとしています。
睡眠の質と健康についてこれまで多くの研究がおこなわれていますが、そこでも、たとえば、睡眠時間が短すぎても、長すぎても、病気の発症率が高くなるという報告がたくさんなされています。
よく寝るのはよいけれども、寝すぎるのはよくないということでしょうか。
いずれにしても、睡眠は休息だけでなく、細胞の修復の機会でもあるわけで、健康にとってとても大切であることは間違いありません。女性の場合でも、睡眠を促し、質を高めるホルモン、「メラトニン」の分泌量が卵胞の成熟や胚の質に関係することが確かめられています。
睡眠の質の低下は、活性酸素の発生量を増加させ、体内の抗酸化力を低下させることで、酸化ストレスを高めたり、エネルギーの産生効率を低下させたり、免疫力を低下させ、バランスを崩したりして、生殖活動へのマイナスの影響は計り知れません。
早く寝て、早く起きて、質の高い睡眠を確保することは、自身の健康にとっても、新しい命(生殖細胞)の健康にとっても、とても大切なことだということでしょう。そして、その気になりさえすれば、何のコストもかからずに実行できます。
あと、睡眠不足で、精液検査を受けて、結果が悪かった場合、ライフスタイルを見直してから、再検査すべきですね。