乳製品の摂取と精子の質や生殖ホルモンとの関係

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2013年05月23日

Human Reproduction

食生活の全体のパターンに関わりなく、全脂肪の乳製品、特にチーズをよく食べる男性ほど正常精子形態率が低いことがアメリカのハーバード公衆衛生大学院の研究でわかりました。

試験は、2009年から2010年にかけて実施された18から22才の健康な男性のライフスタイルと精液検査の結果との関係を調べた「ロチェスターヤングメンズスタディー」の参加者を対象に、食物摂取頻度調査から得られた乳製品の摂取状況と精子濃度や総精子数、運動率、形態率との関係を調べました。

その結果、トータルの乳製品の摂取量が多い男性ほど正常精子形態率が低く、それは低脂肪ではなく、全脂肪の乳製品との関連であることがわかりました。

乳製品の摂取量別に4つのグループに分けたところ、1日あたりの乳製品の摂取量が最も少ない(0-1.65serving/day)グループの男性の正常精子形態率は平均10.0%で、2番目に少ない(1.67-2.96)グループの男性は8.9%、3番目に少ない(2.98-4.29)グループの男性は7.7%、そして、最も多い(4.33-13.26)グループの男性は7.5%でした。

また、乳製品の摂取量が多いほど、精子濃度や精子数が少なくなる傾向がみられました。

さらに、乳製品の摂取量と生殖ホルモンの関係を調べたところ、摂取量が多い男性ほどFSHが高く、特に、精液検査の検査項目で1項目でも基準値を下回っていた男性ほど、その関連が強くみられました。

コメント

ハーバード公衆衛生大学院の研究グループは、最近、報告されている、この十数年の男性の精子数の減少傾向は、環境中のエストロゲンやエストロゲン様物質の増加の影響がその背景にあるのではないかとの仮説のもとに、さまざまな疫学調査を行っています。

今回の研究の対象となった、18から22才の健康な男性のライフスタイルと精液検査の結果との関係を調べた「ロチェスターヤングメンズスタディー」もその一つのようです。

乳製品と精子の質との関連で、最も強かったのは、乳製品、特に、低脂肪ではなく、全脂肪の乳製品をたくさん食べる男性ほど、正常精子形態率が悪いというものでした。また、精子濃度や精子数も少なかったとのことです。

対象となった男性はどれくらいの乳製品を食べていたかと言うと、最も少なかったグループで、ゼロから1.65serving、最も多かったグループで4.33-13.26servingです。「serving」というのは「一食分として食べる量」という意味なのですが、乳製品の場合は牛乳でコップ半分、チーズで1かけ、スライスチーズで1枚、ヨーグルトで1パックです。ですから、好きな人にとっては、毎日、5servingくらい食べている男性も少なくないかもしれません。

因みに日本の農林水産省の食事バランスガイドでは乳製品の1日の摂取量は2servingとなっていますから、今回の研究では2番目に少ないグループになります。

研究グループは乳製品のなにを問題視しているかと言うと、女性ホルモンが含まれていることです。そして、今回の研究では乳製品をよく食べる男性ほど、FSHが高く、特に、精液検査で数値が悪かった男性ほど、その関連が強かったとのことですから、もしかしたら、牛乳などに含まれているエストロゲンが悪さを働いている可能性は否定できないとしています。

乳製品も食べ過ぎるのはよくないようです。