排卵誘発剤を用いたタイミング法や人工授精、高度生殖補助医療で生まれた子どもと自然妊娠で生まれた子どもの幼年期から青年期にかけての精神障害の発症リスクを調べるためにデンマークで生まれた子どもを対象にした大規模なコホート研究が実施されました。
1995~2003年にデンマークで生まれた子どもをデンマーク出生登録から、不妊治療を受けていたかどうかをデンマーク体外受精登録やデンマーク国民処方薬登録から、子どもの精神障害の発症をデンマーク精神科センター登録から、それぞれ調べました。
調査期間に出生した子どもは555,828人、その内、不妊治療で生まれた子どもは33,139人(一般不妊治療18,148人、高度生殖補助医療14,991人)でした。子どもが8~17歳時点の2013年まで精神障害の発症状況と妊娠の方法の関係を調べました。
その結果、精神障害(自閉症スペクトラム、多動障害、行為、感情、社交障害、チック障害など)と診断されたのは23,278人でした。自然妊娠で生まれた子どもの発症リスクは3.9%、高度生殖医療で生まれた子どもでは3.5%、排卵誘発剤を使用して生まれた子どもでは4.1%でした。
このように体外受精や顕微授精で生まれた子どもの幼年期から青年期にかけて精神障害の発症するリスクは自然妊娠で生まれた子どもと変わらないが、排卵誘発剤を使って生まれた子どもはわずかに高いことがわかりました。
コメント
不妊治療が出生児の精神障害の発症になんらかの影響を及ぼすかどうかについてのデンマークの大規模な研究です。
排卵誘発剤を使って生まれた子どもではわずかに発症リスクが上昇したとのことですが体外受精や顕微授精で生まれた子どもは自然妊娠で生まれた子どもと発症リスクは変わらなかったとのことです。
ほぼ同時に発表されたスウェーデンの調査では顕微授精で生まれた子どもは知的障害の発症リスクがわずかに高かったという報告がなされていますが、デンマークの研究では体外受精と顕微授精別に調べていないようです。
そもそも、自然妊娠で生まれた子どもでもある割合で知的、精神障害は発症するわけで、その発症リスクとの比較で不妊治療の影響を調べるしかありません。
いずれにしても、大きな差は見られないということです。