アメリカのコロンビア大学の研究者らのチームは、ビタミンD濃度と着床能力の関係を調べるため、卵子提供を受けて体外受精に臨む99名の女性を対象に試験を実施しました。
卵子提供を受けた胚移植の前にビタミンD(25(OH)D)の血中濃度を測定し、その後の治療成績との関連を調べました。
ビタミンD濃度が30ng/dl以上で正常な範囲にある女性は35名(35%)、20~30ng/dlの不足している女性は38名(38%)、そして、20ng/ml未満の欠乏している女性が26名(26%)で、ビタミンDが欠乏している女性の妊娠率は適正な範囲の女性に比べて低く(37%対78%)、出産に至った確率も同様なこと(31%対59%)がわかりました。そして、不足している女性との間では違いは見られませんでした。
このことからビタミンD濃度が25(OH)Dが30ng/ml未満で不足したり、欠乏している女性は卵子提供を受けて体外受精を受けた場合の妊娠率や出産率が低く、ビタミンDは子宮内膜の着床環境に関与していることがわかりました。
コメント
ビタミンDは骨の形成や成長を促す脂溶性のビタミンとして知られてきましが、近年、細胞の増殖や分裂を調整する作用があることから、その多彩な働きが注目されている栄養素です。
ビタミンというものの、皮膚で紫外線によって体内で生成され、細胞の核内の受容体に結びついて遺伝性発現によって作用することからホルモンであるとも言われてます。
このビタミンDは妊娠や出産においても重要な役割を担っていることがわかってきました。
たとえば、ビタミンD濃度が低い女性はAMH(アンチミューラリアンホルモン)の値が低く、卵巣内の卵子が早く減る傾向にあったり、PCOSの女性はビタミンD濃度が不足している割合が高く、ビタミンDを補充することで排卵率が高まるとの報告、そして、子宮筋腫の女性でもビタミンDが不足している割合が高く、さらには、ビタミンD濃度の低い妊婦は妊娠や出産のリスクが高いとの報告まであります。
とにかく、妊娠する力、出産する力に深く関与しているようなのです。
体外受精の治療成績との関連においても、いくつかの試験が行われており、ビタミンD濃度が高い女性ほど妊娠率が高くなると報告されています。
今回のアメリカの研究チームは、昨年、188名の体外受精を受けている女性を対象に、ビタミンDと治療成績との関連を調べた試験を実施したのですが、白人女性ではビタミンD濃度が高い女性ほど妊娠率が高いことを確かめたのですが、ビタミンDは卵巣の反応性や胚の質のは関連しなかったことから、子宮内膜の着床環境に影響しているのではないかとの仮説を立て、今回の試験を計画したとのことです。
ビタミンD濃度が子宮内膜の着床環境に関連したのは、おしらく、ビタミンDの抗炎症作用や免疫調節作用ではないかとしています。