トランス脂肪酸の摂取が多い男性ほど総精子数が少ない

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2014年01月16日

Human Reproduction

トランス脂肪酸の摂取量が多い男性ほど総精子数が少なく、コレステロールの摂取量が多い男性ほど射出精液量が少ないことがスペインの健康な若い男性を対象にした試験で明らかになりました。

若い男性のトランス脂肪酸の摂取量と精子の質の関係を調べるために、ハーバード公衆衛生大学院の研究者らは18~23歳の若い健康な男性209名を対象に、食物摂取頻度調査から得られた脂肪酸の摂取状況と精子濃度や総精子数、運動率、形態率との関係を解析しました。

各脂肪酸の摂取量で4つのグループに分けて、精液所見に影響を及ぼす要因を排除し、精液所見との関連を解析した結果、トランス脂肪酸の摂取量が増えると、総精子数の中央値は144百万、113百万、100百万、89百万と少なくなり、トランス脂肪酸の摂取量が多い男性ほど総精子数が少ないことが明らかになりました。

また、同様にコレステロールの摂取量が増えると、射出精液量の中央値は3.6ml、2.6ml、2.8ml、2.4mlと少なくなる傾向がみられ、コレステロールの摂取量が多い男性ほど精液量が少ないこともわかりました。

コメント

これまで不妊治療を受けている男性パートナーを対象にした試験で、肉類の脂肪に多い飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰な摂取は精子濃度を低下させ、魚油に多いオメガ3系脂肪酸の摂取は正常形態精子を増やすとの研究報告がなされていました。

今回は、健康な若い男性を対象にトランス脂肪酸の摂取量と精子の質の関係を調べています。

その結果、トランス脂肪酸の摂取が多い男性は総精子数が少ないことがわかったとのこと。

そもそも、植物性の油は、普通、常温では液体で、空気に触れると酸化されやすく、加熱すると劣化しやすくなりますが、工業的に水素を添加し、一部の化学構造を変化させると、液体から半固形になり、酸化や加熱にも強く、さらには、風味もよくなり、食品産業にとっては格段に扱いやすくなります。

このような加工を施し、マーガリンやショートニングをつくっているのですが、このような化学的な操作を加える際に出来てしまう副産物がトランス脂肪酸です。

食品産業にとってはとても都合のよい油なのですが、食べる側にとっては、よいことは何もなく、これまでの研究では摂り過ぎるといろいろな病気や障害のリスクを高めることがわかっているというやっかいなものです。

どんな食品に含まれているかというと、マーガリンや菓子パン、ドーナツ、クッキー、フライドポテト、冷凍食品などで、加工食品やファストフード、あらゆるスナック菓子などです。

つまり、スナック菓子やファーストフードをたくさん食べていると精子をつくる働きが弱くなってしまうかもしれないというわけです。

トランス脂肪酸の健康への悪影響は既によく知られていて、アメリカのFDA(食品医薬品局)は昨年の11月に食品への使用を禁止する方針を明らかにしています。

また、女性にとってもトランス脂肪酸の摂り過ぎは卵巣機能を低下させたり、子宮内膜症を悪化させたりすることが明らかにされています。

マーガリンは使わないこと、スナック菓子やファーストフードはほどほどにすることです。