女性の抗酸化物質の摂取と妊娠するまでに要する期間の関係

生活習慣・食事・サプリメント

2014年01月21日

Fertility and Sterility

原因不明の不妊症で不妊治療を受けているカップルの女性において、βカロテンやビタミンC、ビタミンEの摂取量と妊娠するまでに要する期間が関連することがわかりました。ただし、その影響はBMIや年齢によって異なりました。

アメリカのピッツバーグ大学の研究者らは、女性の抗酸化物質の摂取が妊娠するまでの期間にどのように影響を及ぼすのか調べるために、不妊治療を受けている原因不明不妊の女性患者437名を対象に、食物摂取頻度調査票でβカロテンやビタミンC、ビタミンEの摂取量(総摂取量、食事からの摂取量、サプリメントからの摂取量)と妊娠するまでに要した期間との関係をBMIが25以上と25未満、年齢が35歳以上と35歳未満にわけて解析しました。

試験実施期間中に273名の女性が妊娠、出産に至りました。尚、不妊治療は同じ治療方針のもとで実施されました。

その結果、βカロテンやビタミンC、ビタミンEの平均摂取量は妊娠、出産に至った女性と妊娠しなかった女性の間には大きな違いは見られませんでしたが、BMIが25以上で年齢が35歳未満の女性ではサプリメントによるβカロテンの摂取量が多いほど、また、BMIが25未満で年齢が35歳未満の女性ではサプリメントによるビタミンCの摂取量が多いほど、そして、35歳以上の女性ではサプリメントによるビタミンEの摂取量が多いほど、妊娠するまでの期間が短いことがわかりました。

コメント

酸化ストレスは卵の成育や卵質にマイナスの影響を及ぼすであろうということは、あくまで、「理論的」であり、「試験管内で起こっている」ことで、実際の臨床試験結果は、相反する結果が出ることがよくあります。

一方、男性のほうはというと、酸化ストレスが精子にダメージを与え、精子DNAの断片化率の上昇や濃度や運動率の低下を招き、妊娠させる力を低下させることが実際の臨床上でも確かめられています。

実際に、コクランレビューでも、高度生殖医療を受けている男性パートナーが抗酸化サプリメントを摂取しているカップルのほうがしていないカップルに比べて、妊娠率、出産率ともに、統計学的に意味のある差でもって、高いことが報告されていますが、女性のほうがと言えば、抗酸化サプリメントを摂取していても、摂取していなくても、妊娠率において、統計学的に意味のある差はないと報告されています。

それでは、妊娠を望むカップルの男性のほうは抗酸化サプリメントを摂ったりして抗酸化力を高めることは意味がって、女性のほうは意味がないのか、そのことを臨床的に確かめようというのが今回の研究ですので、とても興味深い報告でした。

そして、この研究からわかったことは、一言で言ってしまうと、女性にとっての抗酸化物質を摂取することの影響は男性ほど単純ではないということでしょうか。

抗酸化物質の総摂取量そのものと妊娠までの期間は関連性はなかったものの、BMIや年齢によっては、個々の抗酸化物質が妊娠するまでの期間に関連していたということは、卵子の成育や質に影響を及ぼす因子は精子よりも多く存在し、そして、それらが複合的に影響するということだと思います。

要因の中でも肥満度や年齢の影響は女性のほうが大きいということでしょう。

このことから、妊娠を望む女性にとって抗酸化物質を補充して、抗酸化力を高め、酸化ストレスを低減することは意味のあることではありますが、それよりも、もっとベーシックなところの栄養バランスや健康状態が大切なのでしょう。

つまり、特定の成分や食材さえ摂っていればいいということではなく、バランスのよい食生活や適度な運動、規則正しい生活リズムで質の高い睡眠を確保することに尽きるということだと思います。