アメリカのロザリンドフランクリン医科学大学の研究チームは3回以上の流産を繰り返している習慣性流産の女性133名を対象に血中のビタミンD濃度と自己抗体などの自己免疫マーカーとの関連や試験管内のビタミンDの細胞免疫への影響を調べました。
その結果、半数弱の63名がビタミンDがミリリットルあたり30ng未満のビタミンD不足で、ビタミンDが正常な女性に比べて、抗リン脂質抗体や抗核抗体、抗ssDNA抗体、抗甲状腺ペルキシダーゼ抗体陽性の女性が多く、ビタミンD不足の女性はNK細胞の割合が高く、NK細胞の細胞障害性も高いことがわかりました。
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ビタミンDは、現在、専門家の間で最も注目さてているビタミンで、免疫作用の調節においても重要な役割を担っていることが多くの研究で明らかにされています。
そのため、ビタミンDが不足することで免疫機能が低下、混乱し、インフルエンザにかかったり、発がんのリスクが高くなったり、パセドー病や橋本病などの自己免疫疾患にかかるリスクが高くなるとされています。
今回、ビタミンDの欠乏は免疫異常を介して、習慣性流産のリスク要因にるかもしれないことを示しました。
これまで、ビタミンD濃度が低い女性はAMH(アンチミューラリアンホルモン)の値が低く、卵巣内の卵子が早く減る傾向にあったり、PCOSの女性はビタミンD濃度が不足している割合が高く、ビタミンDを補充することで排卵率が高まるとの報告、そして、子宮筋腫の女性でもビタミンDが不足している割合が高いとの報告がなされています。
免疫調節作用と妊娠、出産との関連ではビタミンD濃度は子宮内膜症の着床環境に関与しているとの報告もなされています。
ビタミンというものの、皮膚で紫外線によって体内で生成され、細胞の核内の受容体に結びついて遺伝性発現によって作用することからホルモンであるとも言われていることから、日照時間が短い冬は不足しやすいとされています。
アンコウ肝や紅ザケ、さんま、にしん、うなぎなどに多く含まれますが、サプリメントで補充するほうが現実的かもしれません。因みにイギリス保健省は妊娠中や授乳中の女性に1日に10μg(400IU)のビタミンDのサプリメントを摂取することを推奨しています。