運動と体外受精の治療成績との関連を調べるために、体外受精に臨む121名の女性に過去1年間の身体活動についてのアンケートを行いました。
アンケートは、4つの領域(家事や介護や仕事、日常の身体活動、そして、スポーツやエクササイズ)で、どの程度活発に身体を動かしているのか、それぞれ、5段階で答えてもらい、トータルの身体活動レベルを4~20のスコアにしました。また、胚移植後から妊娠判定まで、加速度センサーを身体に装着してもらい、治療までの1年間と胚移植後の身体活動と治療成績の関係を解析しました。
その結果、治療前1年間の身体活動が活発な女性ほど妊娠率が高い傾向がみられ、特に、散歩や自転車、移動など日常生活で身体をよく動かしているほど、妊娠率、出産率ともに良好でした。
一方、胚移植後から妊娠判定迄は、普段通りの生活でも、静かに過ごしていても、治療成績とは関連しませんでした。
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運動習慣が健康によいことは"常識"ですが、日頃の身体活動と体外受精の治療成績との関連を調べた研究はそれほど多くはありません。また、運動習慣は体外受精の妊娠率によい影響を及ぼすというもの、反対にマイナスの影響を及ぼすという相反する結果が報告されていて、混乱させられることもあります。
医学論文では相反する結果が出ることは珍しいことではありませんが、一口に「運動習慣」と言っても、どんな運動を、どれくらいの頻度で、それくらいの強度で行っているのか、客観的に評価することがとても難しいということがあるのかもしれません。
今回の試験では、アンケートによる自己申告ではありますが、単に運動しているかいないかというものではなく、家事や介護、仕事、日常生活、スポーツの4つの領域で、具体的な身体活動について、頻度や強度を5段階で評価するという内容で、信頼性が高いとされているアンケートのようです。
注目すべきは、散歩やサイクリング、移動などで、よく身体を動かす人は、妊娠率、出産率の全体を通して、治療成績が良好だったことです。一方、特別なスポーツに取り組んでいる人は妊娠率は高いものの、出産率は関連しないという結果でした。
このことから、特別な運動ではなく、普段の生活でウォーキングやサイクリングを楽しむことのほうが治療成績にはプラスに影響することがわかります。
また、胚移植後から妊娠判定までの過ごし方については関心の高いテーマですが、これについては、自己評価ではなく、加速度センサーを装着して身体活動を測定しています。
こちらのほうは特別に静かにしていても、普段通りの生活をしていても、治療成績は変わらないとのことです。
運動や血行をよくし、食後の血糖値を安定させ、ひいてはホルモンバランスの整えるとされています。また、ストレスの解消にもなり、メンタルにもよい影響を及ぼすことが知られています。
さらには、妊娠しやすくなるだけでなく、妊娠や出産のリスクをも低くするといいます。
それも、スポーツクラブやジムに通ったり、特別なトレーニングをする必要もありません。毎日、30~60分程度のウォーキングで十分なのです。お金もスキルも不要であるにもかかわらず、その効果はとても大きいので、やらない手はありません。