1999年から2008年にかけてノルウェイ―国立衛生研究所によって実施されたノルウェー母と子のコホート調査に参加した妊婦で、22週から41週と6日の妊娠期間で一人子を出産した健康な女性、66,000人を対象に、妊娠中の食生活パターンと早産のリスクとの関係を調べました。
食生活パターンは食物摂取頻度調査票を用いて、野菜や果物、オリーブオイル、ナッツ、全粒穀物、食物繊維の豊富なパン、ミネラルウォーターをよく摂る「prudent(良識的な食スタイル)」、塩や砂糖で味付けしたスナック菓子、精製パン、ケーキ、砂糖入清涼飲料水、精製加工肉をよく摂る「western(西洋スタイル)」、ポテト、魚、低脂肪乳、調理済野菜、鶏肉をよく摂る「traditional(伝統的な食スタイル)」の3つの食生活パターンにわけ、それぞれの傾向を弱、中、強の3つのレベルに分けました。
その結果、良識的な食スタイルのスコアの高い妊婦は低いスコアの妊婦に比べて早産のリスクが12%低く、伝統的な食スタイルのスコアの高い妊婦は低い妊婦に比べて早産のリスクが9%低いことがわかりました。
一方、西洋スタイルでは、スコアによる早産のリスクに統計学的に意味のある違いは見られませんでした。
このことから、妊娠中の良識ある健康的な食生活や伝統的な食生活は早産の低リスクと関連していることから、その因果関係は不明であるものの、妊娠中は、加工食品やファストフード、ジャンクフード、スナック菓子を避けるというよりも、野菜や果物、全粒穀物、魚をバランスよく食べ、ミネラルウォーターを飲むことをアドバイスすべきでと結論づけています。
コメント
日本では、早産や低出生体重児が増えている傾向にあります。女性のやせ傾向(低栄養、現代型栄養失調)や出産年齢の高齢化など、さまざまな背景が指摘されていますが、赤ちゃんの将来の健康にも影響を及ぼすわけですから、問題は決して小さくありません。
これだけの規模とレベルで妊娠中の食生活と早産リスクとの関係を調べた研究は初めてとのことで、とても貴重な報告です。
結果を詳細にみてみると、食生活パターンと早産リスクとの関連が強くみられたのは、出産経験のある女性よりも初めての女性でした。このことは、初めての妊娠、出産経験なので、妊娠中に健康的な生活を心掛けていた女性が多かったということなのかもしれません。
また、健康的な食生活や伝統的な食生活とリスクが低かったのは34週から36週と6日の後期の早産でした。それは、22週から33週と6日という早期の早産の絶対数が少ないことやその原因が羊水感染などによるもので、明確な早産の原因を食生活で防ぐことは出来ないということが言えます。
これまでは、腸内環境を整える乳酸菌の摂取、また、地中海ダイエット、マルチビタミンミネラルや葉酸サプリメントの摂取が早産リスクの低下と関連するとの報告がありました。
また、肥満や歯周病は早産のリスクが高くなることが知られています。
さらに、食生活や肥満、炎症体質は、妊娠合併症や出産に伴うリスクに関連していることもわかっています。
もちろん、食生活だけで完全に予防できるというわけではありませんが、今回の研究結果とあわせると、妊娠前からバランスのよい食生活を心掛けることが、健康な赤ちゃんの妊娠、出産にとても大切であることがよくわかります。