卵子提供による体外受精の治療成績への卵子提供を受けた女性の年齢による影響を調べるために、アメリカのSART(生殖補助医療学会)による全米の2008年から2010年の卵子提供による新鮮胚移植27,959周期の体外受精の治療成績を、卵子提供を受けた女性の年齢別(34歳以下、35〜39歳、40〜44歳、45〜49歳、50歳以上)で比較しました。
その結果、卵子提供を受けた女性の年齢が44歳までは妊娠率や出産率にそれほどの変わりませんでしたが、45歳を超えると低下することがわかりました。40〜44歳の平均の出産率を基準にすると、45〜49歳では12%、50歳以上になると25%、それぞれ、低下、また、45歳の平均の出産率を基準にすると、47歳では26%、48歳では35%、49歳では31%、それぞれ、低下したとのこと。
このことから若い女性から卵子提供を受けた場合でも、年齢が45歳を過ぎると、小さいながらも確実に、統計学的に意味のある差で低下することを明らかにしました。
コメント
女性が30代半ばを過ぎると、年齢が高くなるにしたがって、妊娠率が低下していくことが知られています。ただし、若い女性から卵子の提供を受けると、卵子提供を受けた女性の年齢が高くなっても、妊娠率が低下せず、卵子提供者の女性の年齢の妊娠率が得られることから、妊娠率を決定するのは卵子の質であることの証拠であるとされています。
従来、若い女性から卵子提供を受けると、提供を受けた女性の年齢が高くなっても妊娠率は低下しないとされていましたが、今回、45歳を超えると少しずつではあるが、確実に低下することが確かめられました。
アメリカやヨーロッパに比べて、日本の高度生殖補助医療の治療成績が低いのは、高齢でお子さんを望む場合、欧米では40歳を超えると若い女性から卵子の提供を受けることが一般的になっているのに対して、日本では卵子提供で妊娠、出産を目指すことが現実的ではなく、自分の卵子で治療を繰り返すしかないことが原因であると考えられています。
つまり、40歳を超えると体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療でも妊娠率の低下は克服できないため、可能性がある限り、それらの治療を数多く繰り返すしかないわけで、当然、経済的にも、肉体的にも、そして、精神的にも大きな負担になっています。
その一方で、アメリカなどの海外に出かけていって、卵子の提供を受け、妊娠、出産を目指すカップルが増えていると言われています。
その場合、日本で、一定期間、自分の卵子で体外受精や顕微授精を繰り返したにもかかわらず妊娠に至らなかった後に海外で卵子提供を受けるという選択を検討することから、年齢的にはどうしても40代半ば以降になってしまいます。
ところが、今回の報告を考慮に入れると、卵子提供を受ける場合でも年齢的には45歳までに行うほうが得策であると言えます。