マサチューセッツ総合病院の生殖医療センターに通院しているカップルのパートナーの男性155名(18〜55歳)を対象に食物摂取頻度調査票で乳製品の摂取状況を調べ、精液所見の結果との関係を解析しました。
その結果、全乳製品では全体の摂取量と精液所見との間には関連はありませんでしたが、チーズをよく食べる男性ほど総精子数や精子濃度、精子運動率が低い傾向がみられました。特に、現在、もしくは、かつてタバコを吸っていた男性の間で顕著で、全乳製品の摂取量別に4つのグループに分けたところ、1日あたりのチーズの摂取量が最も多い(0.82〜2.43serving/day)グループの男性は、最も少ない(<0.43seving/day)グループの男性に比べ総精子数が53.2%低いことがわかりました。
一方、低脂肪乳製品をよく食べる男性ほど、精子濃度や精子運動率が高く、1日あたりの低脂肪乳製品を多く食べる(1.22〜3.54serving/day)男性は最も少ない(<0.28serving/day)男性に比べて精子濃度が33.3%、精子運動率が9.3%、それぞれ高いことがわかりました。この関連は低脂肪牛乳によるものとのこと。
このことから、低脂肪乳製品、特に、低脂肪牛乳の摂取と高い精子濃度と精子運動率が関連すること、喫煙男性ではチーズと低い精子濃度と精子運動率が関連することがわかりました。
コメント
「The Fertility Diet(妊娠しやすい食生活)」の著者であるハーバード公衆衛生大学院准教授ジョージチャバロ先生らは食生活と男性の精子の質の関連について多くの研究を実施しています。
抗酸化物質の摂取と精子の質との関係やトランス脂肪酸の摂取と精子の質との関係、運動と精子の質との関係、そして、乳製品と精子の質の関係については、今回の試験ではマサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルの男性を対象にしていますが、以前は健康な大学生を対象とした試験を実施しています。
前回の大学生を対象とした試験では、全脂肪の乳製品をたくさん食べる男性ほど精子の質が低かったというものでしたが、今回、不妊治療を受けているカップルの男性では低脂肪乳製品をたくさん食べる男性ほど精子の質が低いというものでした。
乳製品や牛乳に含まれるエストロゲンが精子形成にマイナスの影響を及ぼすことが懸念されることから、乳製品を過剰に摂取することは避け、牛乳は低脂肪乳を選択するのが無難なようです。